飲み物に睡眠薬などの薬物を混ぜられたのを知らぬ間に飲み、意識を失って性的暴行を受けるレイプドラッグ被害が広がっている。昨年(2019年)、事件化されただけで47件。もちろん氷山の一角だ。
出会い系サイトのマッチング・アプリを悪用して、複数の女性に暴行して服役中の男は、「手軽、後腐れがない、簡単。暴力で無理やりレイプするより、自分はましかなと思ってた」と話した。
「トイレから戻って飲み物を口にしたら記憶がなくなった」
被害を受けたさやかさん(仮名)は、男と初めての食事のときに、トイレから戻って残っていた飲み物を3口飲んだところで、記憶がなくなった。目が覚めたら、自宅のベッドで裸だった。男が覆いかぶさっていたが、抵抗できなかった。
午後10時から午前6時までの記憶がない。「何があったのか知りたい」と男に連絡したが、返事はない。警察に相談して捜査が始まったが、防犯カメラの映像は衝撃だった。男に手を引かれて家に入っていく姿が写っていた。警察は「睡眠薬だと、普通は担ぎ込まれる。これでは立件できない」と、尿検査もしなかった。
1週間後、性暴力被害専門のワンストップ支援センター「京都SARA」を知る。4年前に各自治体にでき、医療、福祉、法律の専門家を擁して、立体的なサポートをする。ここで、睡眠薬の特性は、意識がなくても普通通り歩いたり、話したりできると知った。
今度は弁護士と一緒に警察へ行った。すると警察は「毛髪検査」を提案した。薬物を数年前まで遡れるという。睡眠薬が検出され、男は逮捕された。複数の犯行のうち2件が起訴され、懲役7年の実刑判決が出た。
さやかさんは「積み上げてきたものが、一瞬で崩されました。私は人間として見られていなかった。忘れることもできましたが、それでは犯罪はなくならないので、話すことで何かが変わると考えました」と語った。
慶大教授の宮田裕章さんは「女性への想像力を欠いている。尊厳を踏みにじるものです」と怒る。