芸人が「闇営業」として反社会勢力のイベントに参加した問題で、ワタナベエンターテインメントは昨日1日(2019年7月)、振り込め詐欺グループのパーティーに参加したザブングルの松尾陽介(42)と加藤歩(44)の謹慎期間を8月末までと発表した。
受け取った金銭はしかるべき団体に支払い、復帰まではボランティア活動などを行うという。問題発覚当初から嘘をつかず、金銭の授受を認めていたザブングルについては復帰への道筋が示されたが、他の芸人については活動再開のメドが立っていない。
吉本の養成学校を卒業しても身分保証はなし
今回の問題では、事務所を通さない直営業(闇営業)が反社会勢力に付け込まれるきっかけとなったが、そこには芸人たちが直面する厳しい現実がある。
吉本興業は、養成学校である吉本総合芸能学院(NSC)を運営して新人芸人を育てている。しかし、NSCを卒業しても身分を保証しない。東京校の場合、卒業生は劇場でネタバトルランキングを行い、お客さんの投票でギャラがアップしていくシステムとなっている。
ギャラが出るのは上位190組で、それ以下はノーギャラ。ギャラが出るとはいえ、下のランクのトライアルクラスでは1回500円だ。ランキングが上がれば吉本社内から注目され、仕事やオーディションの声がかかる。現役若手芸人は、月10~15本のライブをこなしても月収が2万円と証言する。そこで飲食店アルバイトなどで生活費を稼ぐことになる。
こうした若手芸人にとって直営業は魅力的だ。ある芸人は、結婚式の余興で3万円の収入を得たことがあるそうだ。しかも、闇営業を吉本に報告しても「どういう関係か」を聞かれるだけで、ギャラの額は変わらないという。
開かれたオーディションができない日本
青木理(ジャーナリスト)「アルバイトとなると、直営業と区別がつかない。ランキングが下の人たちに直営業するなというのは無理」
井上裕司さん(元吉本芸人)「社員さんの方は芸人さんの事情もわかっている。(直営業は)表向きはダメだが、信頼関係と暗黙の了解でやっている」
玉川徹(テレビ朝日解説委員)「直営業はちゃんとやればいい。法務部が契約書を作り、管理下に置く。コストはかかるが、リスクマネジメントをする必要がある」
菅野朋子(弁護士)「(直営業を)あまりにも全面的に締め付けると裏でやることになる。個人事業主は契約書なしで仕事することもあるが、あいまいなところが良くない」
玉川「アメリカはオーディションシステムが発達しているが、日本は事務所が組織としてテレビ局に入ってくる。芸能事務所をないがしろにできず、開かれたオーディションシステムに移行できない。成り立ちが違う」