企業や住人も海外に移転
香港は世界の金融センターでもあるが、中国との一体化を嫌ってオフィスをシンガポールに移そうという企業も出始め、在住2万5000人という日本人にも不安が広がる。香港で35年暮らして日本料理店を経営する吉田寛さんは、「常連客から将来を危ぶむ声をよく聞きます。資産を移そうか、台湾に行こうかという人もいる。商売に影響します」と心配顔だ。
神田外国語大の興梠一郎教授は「香港が中国に返還されたときに国際社会に約束したことが、一つずつ切り崩されていく」と指摘する。普通選挙、言論・出版・結社・デモの自由、香港独自の行政や司法の処理管轄権などが、一国二制度の下で保護されるはずだった。しかし、自由な選挙は何年たってもじっしされず、2014年の行政長官選挙では中国共産党に批判的な候補者が事実上排除され、「雨傘運動」と呼ばれる反対デモのきっかけとなった。引き渡し条例は、そのダメ押しと多くの市民が受け止たのだ。
香港政府が今回のデモに「組織的暴動」という言葉を当てたのも、天安門事件を力で鎮圧した中国政府のやり方と同じだと受け取られた。世界でも紳士的なイメージだった香港の警察当局が、デモ隊の前に武装部隊を押し出してきたことも、人々に深刻な締めつけ強化を感じさせた。
文
あっちゃん