そのランプを手に入れたものは、3つの願いを叶えることができる――。不思議なランプを手に入れた貧しい青年、アラジン。彼が恋に落ちたのは身分が違う王女、ジャスミンだった。彼はジャスミンに近づくため、ランプの魔法で王子になろうとするが、邪悪な心を持った大臣ジャファーが、恐ろしい野望と共に2人の前に立ちはだかる。
「アラビアン・ナイト」を原作にしたディズニーアニメの名作を「シャーロック・ホームズ」シリーズのガイ・リッチー監督が実写映画化。ランプの魔人ジーニーをウィル・スミスが演じる。シナリオは深く練り込まれていて、とてもよくできた物語になっている。ミュージカル映画として歌も踊りも素晴らしいうえ、登場人物たち一人一人の存在感がしっかりしている。
本当の幸せはランプの魔法では手に入らない
「女は美しければいい」という考えに反発し、国の民のために国王になろうとする、芯のあるヒロイン、ジャスミン。アラジンと同じく、泥棒から成り上がり、大臣にまで上り詰めた野心家のジャファー。そしてウィル・スミスが演じるランプの魔人ジーニー。彼は歌って踊れて、ユーモアもあり、しかも情に厚い。誰かに願ってもらわなければ動けない彼が、禁じ手ギリギリでアラジンを助けようとするシーンもある。
こんな彼らの存在に加え、本作の主人公アラジンがいる。「美女と野獣」では、じつは野獣が教養のある王子だったという設定だが、アラジンはそもそも貧しい家に生まれ、「コソ泥」と言われている青年だ。しかし心はダイヤの原石と言われるほど、純粋で美しく、自分が困っていても人を助ける優しい性格であった。特にラストの展開からは、アラジンのジーニーに対する優しさと、2人の絆が垣間見られる。そんな登場人物たちが、観る人の心をつかむ。
最先端のCG技術を駆使した演出、派手なパレード、空飛ぶ絨毯も見事だが、それ以上に大切なことを教えてくれるエンターテインメントに仕上がっている。ランプの魔法の力で手に入れた幸せは上辺だけ。本当の幸せは自分たちの手でしか手に入らないのである。
そして本作はラブストーリーでもある。アラジンがジャスミンに初めて会った時「僕を信じて」と言う。かつて大ヒットした映画「タイタニック」でも、主人公ジャックがローズに同じセリフを言い、豪華客船の先端にローズを立たせる名シーンがある。壮大なラブストーリーでは、このセリフは必須なのかもしれない。
PEKO
オススメ度☆☆☆