老後資金が2000万円必要という金融庁の報告書(2019年6月3日発表)を巡って騒動が続いている。今度は麻生太郎財務大臣の答弁だ。
10日(2019年6月)行われた参議院決算委員会で、老後資金2000万円問題を取り上げた立憲民主党の蓮舫副代表に対し、安倍晋三首相は「これは不正確であり、誤解を与えるものだった」と答え、麻生大臣は「さらに豊かな老後を送るためには上手な資産形成ができるようにすることが大切という見方を述べたもの」と説明した。
噛み合わない答弁に蓮舫副代表が「報告書は読みましたか?」と突っ込むと、麻生大臣は「冒頭の部分に目を通しました。全体を読んでいるわけではない」と仰天発言。これには蓮舫副代表も「冒頭を読んだだけで『不適切な表現だった』というのは不適切」と呆れ顔。
冒頭を読んだだけで「不適切な表現」というのは不適切
司会の羽鳥慎一「私でも(全文)読みました」
玉川徹(テレビ朝日解説委員)「20分もあれば読める。国会で話題になることがわかっていて、担当大臣がどうして読まないのか」
青木理(ジャーナリスト)「公文書が改ざんされても、暴言があっても麻生さんは辞めずにきた。今回の問題も『この程度の物』となめているんですよ」
飯田泰之(エコノミスト・明治大学准教授)「(報告書元データは)高齢者にアンケートして単純平均を取ったもので、モデルケースとは違う。高齢者の平均貯蓄額が2400万となっているが、10億、20億持っている少数の人が平均値を引き上げている。報告書の問題は、(データが)『貯金を使いましょう』という投資の勧誘資料としておなじみのものだということ。審議会で、『金融庁が投資の勧誘資料出したらダメでしょ』というストッパーが必要だった」
青木理「年金が足りないので、みんな貯金している。それを投資に回せというのがおかしい」
田崎史郎(政治ジャーナリスト)「積立金は株で運用する部分が増えたので、株価が下がると減る」
菅野朋子(弁護士)「金融庁は金融機関を向いている。しかし、年金の話が出ると国民はそこに興味を持つ」
玉川徹「報告書は真実を含んでいるから国民が反応した。やっぱり年金だけじゃ足りない。誤解じゃない」
崩壊した年金100年安心。全てが明らかになるのは参院選後
2004年の小泉内閣で、「年金の100年安心プラン」が出されたが、これは財源に応じて年金額を調整するマクロ経済スライド方式だ。
飯田泰之「マクロ経済スライドは給付金額の自動調整が売りだったが、給付を下げるというのは不人気政策でなかなか発動できない。問題がどんどん先送りされている。今40代の団塊ジュニア世代が年金世代になる前に改革が必要だ」
青木理「今回の金融庁報告書は皆さん読んだ方がいい。年金問題は最大の国難。待機児童や少子化なども全部連関している。政府は金融緩和しただけで何もやっていない」
今年は5年に一度の年金定期検診である「年金財政検証」が発表される年だが、読売新聞によると公表は参院選後となる見通しだ。選挙前に結果を公表しても政権にとって良いことはないからだ。
玉川徹「対米貿易交渉の問題もある。8月になっていろいろ明らかになったら何が起こるか」