古き良き時代を少年の目で描いたひと夏の夢
1970年代後半のポーランドは、ピョトレックの父親が海外に出稼ぎに出向いていることからも分かるように、経済的に苦しい時代だったが、国内では「懐かしき時代」として国民に郷愁を感じさせる時代としてとらえられている。ポーランドの忘却感もピョトレックの目線で描かれており、「変化」に敏感である。初恋、友情、性、そのどれもがピョトレックにとって甘美でいて冷酷な、忘れがたい夏の記憶となる。
父親が帰ってくる。幸せを取り戻したかのように遊園地の遊具で大はしゃぎする一家。笑顔のピョトレックは来年には遊具には興味を示さないかもしれない。彼らの笑顔は蜃気楼のように淡く、邯鄲の夢の如し美しい。
おススメ度☆☆☆☆
丸輪太郎