生徒が殺傷された川崎市多摩区の私立カリタス小学校がきょう5日(2019年6月)から授業を再開した。高松広明事務局長は「心のケアに最大限の注意を持って、(子どもたちを)守っていかないといけない」と話す。具体的な対応は、カウンセラー2人を常駐させ、保護者の送り迎えを認める。バス停を登戸の駅前に移動し、スクールバスではなく市バスを利用する、心のケアの授業を行うなどだ。
児童心理カウンセラーの山脇由貴子さんは「どの程度の傷を負っているかは子どもによって全然違うので、チェックリストやカウンセラーの問診で全員を見ることが理想です。子どもは苦しくても隠したり、自分で気付けなかったりするので大人側が発見してあげることが必要です」と話す。
教師もPTSD「生き残ってしまった罪悪感」
心配なのが、恐怖体験が日常生活に大きな支障をきたすPTSD(心的外傷後ストレス障害)だ。普段の生活リズムを整え、思い出すきっかけを取り除き、怖いことが起こらない日常を取り戻すことで予防できる。
「お父さん、お母さん、先生、地域の人、お巡りさん。大人全員で、いろんな手段で子どもを守っていると伝え続けることが大事です」と山脇さんは言う。さらに、恐怖に結び付けないように、警察官を見たら「正義の味方がいる」と教え、パトカーのサイレンを聞いたら「困っている人を助けに行く音」と言い、不安になったら「抱きしめる」など、視覚、聴覚、触覚で安心させていくことが大事だという。
ケアが必要なのは、子どもだけではない。山脇さんによると、ショックを受け不安がる子どもにどう接していいか分からず、保護者まで不安になってしまうケースは少なくない。重症化すると子供を外に出せなくなったり、身体が動かなくなってしまったりする。
「教員も心配です。とても大きなダメージを受けているはずですから。親御さんや先生方は自分の症状もしっかりチェックしてください」と山脇さんは解説した。
生き残ってしまったことに罪悪感を持ってしまう、「サバイバーズ・ギルト」は、子どもだけでなく大人も陥りやすい。「何もしてあげられなかった」と無力感を感じる人には、「『あなたに罪はない』とはっきり伝えてあげることが大切」と山脇さんは言う。
気軽に行けるトラウマケアの窓口の必要
司会の真矢ミキは、涙ぐみながら話した。「度合が違いすぎるのですが、私も母が心肺停止になり急に呼ばれ、未だに(救急車の)音がダメなんです。大人は経験豊かだし、症状が出ているとは思わないけれど、今、自分もそうだった(ケアが必要だった)んだな、と思いました」
山脇さん「大人は自分がしっかりしなきゃと思ってしまいますが、自分自身がケアを受けないと子どものケアもできない。カウンセリングや病院にハードルが高いと感じている人はたくさんいます。気軽に行けるトラウマケアの窓口を自治体が作れば、心の傷を抱えて苦しむ方が少なくなると思います」