元農林水産事務次官が、ひきこもり状態だった44歳の長男を刺殺した事件。殺人の疑いで送検された熊沢英昭容疑者(76)は、取り調べに対し、川崎市で児童ら20人が殺傷された事件に触れ、「長男が第三者の子どもに危害を加えるのが危険だと考えた」と供述しているという。
供述によると、殺害された長男の英一郎さんは、30年前、中学校2年生の時から母親に対して暴力をふるうようになった。これは英一郎さんのSNSへの書き込みとも一致する。2017年、「中2の時、初めて愚母を殴り倒した時の快感は今でも覚えている」とツイートしているのだ。
母親を「万死に値する」と憎んでいたが、父親には...
英一郎さんはその後、熊沢容疑者にも暴力をふるうようになり、10数年前から別の場所で暮らすようになった。しかし、先月(2019年5月)下旬、英一郎さんが「帰りたい」と実家に戻ってきた。再び始まった家庭内暴力に熊沢容疑者は、「身の危険を感じ、自分たちの身を守らなければと思った」と供述している。
事件当日、隣接する小学校で開かれていた運動会に「うるせえな、(子どもを)ぶっ殺すぞ」と腹を立てた英一郎さんと熊沢さんは口論になり、事件に至った。自宅から「息子を殺すしかない」と書かれた書き置きが見つかっている。
犯罪心理学者の出口保行さんはこれについて、「自分の背中を押すためではないか。この一撃で、息子の命を奪うんだという不退転の決意がメモの背景にはあると思います」と話す。
英一郎さんは、母親のことを相当恨んでいたようだ。30年前にプラモデルを壊されたことを厳しく非難し、「万死に値する。1万回死んでようやく貴様の罪は償われるのだ」とツイート。「もし殺人許可証とかもらったら真っ先に愚母を殺すな」とも書き込んでいる。
しかし、父親との関係は必ずしも悪くはなかったようだ。英一郎さんと交流があった人物は、5年ほど前、コミックマーケット会場で父子が一緒にいるのを目撃している。英一郎さんは「父です」と熊沢容疑者を紹介。2人は一緒に英一郎さんが書いたイラスト集の販売をしていた。