1日(2019年6月)に起きた、父親が息子を刺殺した事件。逮捕されたのは熊沢英昭容疑者(76)が元農林水産省事務次官というエリート中のエリートだったため、注目を集めている。
事件は、1日午後3時半過ぎ、東京都練馬区の自宅で起こった。「息子を刺し殺した」との110番通報を受け、警察が駆け付けると、1階和室で同居する無職の長男、英一郎さん(44)が血だらけで倒れていた。英一郎さんは搬送先の病院で死亡が確認された。
「父から悪に勝つ方法があると聞いた時、流石と思った」
一家は10年ほど前からこの街に住んでいたが、近所の人は英一郎さんの存在を知らなかった。「夫婦2人暮らしと思っていた」「まさか息子さんがいたとは...」と驚きを隠さない。
一方で、英一郎さんを知る人はSNS上にはたくさんいる。毎日のように更新されていた英一郎さんのSNSでは、自ら本名を名乗り、「元事務次官の愚息であります」と明かしていた。これ以外にも、「私の父は役所で人間を色々見て、観察力があります」「私も父から、悪に勝つ方法がある、と聞いた時、流石と思った」など父親に関する書き込みは多い。
ネット上で交流のあった女性は「自分の父親はこんなにすごい人なんだと、皆さんに伝えたがっている印象でした」と話す。その一方、「私は、お前ら庶民とは、生まれた時から人生が違うのさ」という過激な書き込みもしていた。
エリートの父を誇りに思いながら、そうなれない自分
熊沢容疑者によると、事件当日は隣接する小学校で運動会が開かれており、「音がうるさい」と言う英一郎さんをたしなめたことがきっかけで口論に発展した。また、熊沢容疑者は英一郎さんから日常的に家庭内暴力を受けていたとも供述している。
政井マヤ(フリーアナウンサー)「SNS上で、事務次官の息子だとことあるごとにいうのは変ですね。父親を誇りに思いながらも自分はそうなれないという、エリートの子どもだからこその屈折したものを感じます」
堀尾正明(キャスター)「父親は憧れでもあり、ライバルでもあり、憎悪の対象でもある。熊沢さんは、学歴の最高峰である東大法学部卒で、官僚のトップに上り詰めたひとで、(長男は)ずっとコンプレックスを抱いていたのかもしれない。離れて暮らしていればそういう気持ちは薄れていくものですが、同じ屋根の下で複雑化してしまい、暴力に発展した。最悪な最後を迎えてしまいました」