交差点を直進しようとすると、対向車が強引に右折してきて、すれすれのところで前を横切る。ドライブレコーダーに残された危険な運転は、長野県松本市で横行する通称「松本走り」だ。こうした無理な右折、対向車が左折するのに合わせてほぼ同時に右折したりする違反走行で、事故が頻発しているというから恐ろしい。
このドライブレコーダーの映像は、8年前に埼玉県から松本市に引っ越してきた男性の車のものだが、いまだに「松本走り」に慣れることはないという。「右折してきた車の運転手が、直進車である私の方を全然見ていなくてぞっとしました」と話す。「老若男女を問わず、いろんな方がそういう走り方をしています。危険という意識はないようです」
地元の人たちに聞いてみると、「頭を突っ込んで強引に入ってくるね。松本の人には多いね」「右折車が直進より優先みたいな感じで曲がってきちゃう」「良くないなあとは思うけど、自分もやっているかも」と話す。
「城下町なので道路狭くすぐ曲がらないと渋滞」とは言うけれど・・・
そもそも、交差点で右折する際は、直進する車や左折する車の進行を妨げてはならず、普通車が違反した場合、反則金6000円が課される。実際、この危険な運転によって事故が多発している。松本市によると、去年(2018年)に起きた右折時の事故は78件で、今年(2019年5月13日時点)はすでに24件起きている。
県外のドライバーなどからも、「危険な運転」「マナーが悪い」など多数の苦情が寄せられており、市は広報誌で大々的にこの危険運転の根絶を訴えた。警察も取り締まりを強化しているというが絶たない。
こんな走り方が横行している理由は、松本市の歴史と関係があるようだ。松本市は城下町のため、敵の侵攻を防ぐため道幅が狭く造られている。右折レーンのない道路も多く、右折待ちをするとすぐに後ろに渋滞が発生してしまう。渋滞を回避しようと強引な右折をし、対向車も右折を優先して減速したり停止したりするようになったという。どうやら、「右折優先」が暗黙のルールとなっているようなのだ。