〈ハロウィン〉
ジョン・カーペーターの1978年版本家の正統な続編だ。圧倒的な恐怖と理解不能さはエンドクレジットの呼吸音まで続く

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78年版にも登場したジェイミー・リー・カーティスが...((c)2018 UNIVERSAL STUDIOS)
78年版にも登場したジェイミー・リー・カーティスが...((c)2018 UNIVERSAL STUDIOS)

   1978年のイリノイ州ハドンフィールドで起きた猟奇殺人事件から40年が経過したが、ジャーナリストのアーロンとデイナは事件の真相を調べていた。事件後に精神病棟に隔離されていた犯人の「ブギーマン」ことマイケル・マイヤーズが、刑務所へ移送されることが決まり、アーロンとデイナはマイケルにインタビューを試みるが、マイケルは無言を貫き、動機に迫ることは出来なかった。

   事件の唯一の生存者であるローリー・ストロードに話を聞いても収穫はなかったが、ローリーはマイケルが再び自分の前に現れることを予期し、そのための準備をしていた。そして、ハロウィン前夜、精神病棟から患者を移送する車が横転し、マイケルが40年振りに外界に解き放たれた。

ホラー映画の金字塔だった1978年版に原点回帰

   1978年にジョン・カーペンター監督が生み出した「ハロウィン」は、斬新なキャラクター設定と恐怖を煽る象徴的な音楽で全米を震撼させた。3000万円ほどの低予算の製作費だが200億円の興行収入を記録し、ホラー映画の金字塔として語り継がれている。本作は、78年版の正統なる続編という設定で、本家以降に製作されたシリーズ作品のストーリーはなかったことにされている。

   ジョン・カーペンターが製作総指揮と音楽を担当し、78年版でローリーを演じたジェイミー・リー・カーティスが同役を務め、「セルフィッシュ・サマー」のデヴィッド・ゴードン・グリーンがメガホンをとった。

   「続編」には本家では描かれていない「裏設定」のようなものを描くことで成り立つ要素があり、本家のストーリーを「掘り下げる」ことにより肉付けをしていく。従来の「ハロウィン」シリーズの続編は、マイケルがデコレーションされることにより、一興を生んでいたのは確かだが、78年版で初めてスクリーンに登場したマイケルという殺人鬼の衝撃が弱まっていたのも事実だ。

   映画における「原点回帰」は、ストーリーの系譜が云々ではなく、本家の作品が持つ「生命線」ありきとした製作方針にあるだろう。庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」を傑作たらしめる要因が本家に対するリスペクトにあったように、本作は、スラッシャー(slash=切る)映画やホラー映画が本質的に持つ要素を信じぬき、78年版の続編としてファンも納得できる確固たる要因がある。

動機も理由もなく襲ってくる殺人鬼の正体は?

   結局のところ78年版の面白さの本質とは一体何か? それは、ブギーマンことマイケル・マイヤーズが襲ってくる理由に説明が一切なく、「理解不能」だからだ。動物や災害でもなく、襲う対象が人間であるからこそ、我々は恐怖を感じると同時に、動機を知りたくなるのだが、その動機を明かさないことで、さらに恐怖を煽る――これが「面白さ」の本質だった。

   本家よりも恐怖に対する描写に容赦がなく、頭上に設置された鉛が、いつ落下するか分からないような感覚に常に襲われる。あきれるほどに突き抜けた恐怖描写と理解不能さは、歌舞伎における「型」を思わせ、78年版がスラッシャーホラーというジャンルを作り上げた功績を感じさせる。エンドクレジットの呼吸音は一体何を意味するのか、スラッシャー映画ファンには愚問だろう。ブギーマンは、我々に恐怖という愉悦を今後も与え続けるに違いない。

丸輪 太郎

オススメ度☆☆☆☆

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