1962年のアメリカ。イタリア系白人のトニー・リップはナイトクラブの用心棒として働いていたが、クラブが改装するため仕事を失ってしまった。美しい妻ドロレスと二人の息子を養うため、次に見つけた仕事は黒人ジャズピアニスト、ドクター・シャーリーの運転手兼付き人だった。
黒人差別が色濃いアメリカ南部でのコンサート・ツアーに戸惑うが、高給に魅かれて引き受けることにした。2か月間のツアーでトニーに渡されたのは、黒人が泊まることの許されたホテルガイド「グリーンブック」だった。
アカデミー賞の作品賞、脚本賞、助演男優賞を受賞した実話を基にした話題作だ。
滑稽で哀しくて明るい2人の意地の張り合い
初め、トニーは黒人をしっかり差別していた。自分はしゃべり方も食べ方もどこか品がないのに、シャリーは上流階級育ちのエリートで、そこが気に入らないのだ。しかし、シャーリーが奏でるピアノを聞いた途端、「彼は天才だ」と素直に才能を認める。
作品を通して音楽はもちろんのこと、登場するのは美味しい料理、ロマンチックな手紙のやりとり、シャーリーとトニーの間に少しずつ芽生える男同士の友情。そのすべてが大切な何かを気づかせてくれる。心温まる作品である。
良いものは良いと率直に言えるならば、生まれ、育ち、肌の色を超えて心に届く。シャーリーとトニーの関係は時に笑ってしまうほど面白い。互いが寂しさや辛さを抱えながら、でも、断固として曲げないプライドを持っているところが、見ていて心地良いのだ。