のんびり「路線バスの旅」もうムリ?
京都市は民間のバス会社に市バスの運営を委託することでコストを削減し、税金の支出を抑えてきたが、去年11月(2018年)、委託していた民間会社6社のうち2社が撤退・縮小を表明した。撤退したバス会社の社長は「委託バスは高速バス事業に比べると、ほとんど利益がなかった」という。専門家からは運賃の値上げもやむを得ないという意見も出ているが、それも簡単ではない。
山本社長は「公共交通なので、値上げには国土交通省の認可が必要になります。それには、値上げの根拠を示す必要があり、手間も費用も掛かる細かいデータを作成し、提出しなければならないんです」と言う。都営バスが平成7年に200円にした運賃を210円に値上げしたのは、20年後の平成26年だった。戸崎教授は「10円の値上げも大変です。しかも、10円の値上げでは優秀なドライバーは雇えないし、劇的な改善にはならない」と指摘する。
東京都は4000万円をかけて自動運転バスの実証実験を行った。福岡市のバス会社はビッグデータを活用して路線バスの見直しを始めている。だが、ITの導入は多額の費用が掛かる。もはや、「運賃を上げる」か「利便性を諦める」かの二者択一しか残されていないほど、バス問題は深刻だ。
戸崎教授はこう提案する。「バス事業者の自助努力に任せるのではなく、高齢化社会への先行投資として、国がバス予算を増やすことがあってもいいのではないでしょうか。バスは生活に密着したラストマイルを担っています」
*NHKクローズアップ現代+(2019年4月9日放送「ドル箱路線が次々と 都市の路線バス減便の衝撃」)