山口県立下松工業高校で、生徒を丸刈りにした担任の男性教諭に対し、クラスの生徒全員と保護者が懲戒免職を求める嘆願書を県教育委員会に出した。丸刈りにされた生徒は「(担任から)整髪・服装(検査)に引っ掛かると思うやつは手を挙げろみたいな感じで、手を挙げたら、『昼休みに準備室に来い』と言われ、行ったらバリカンを出してその場で丸刈りにされた」と話している。
戻ってきた生徒を見て目を疑ったのはクラスメートたちだ。生徒の一人は「まさかバリカンで丸刈りにされるとは思ってもみなかったので、教室がざわつきました」と話す。その後も執拗ないじめは続き、「お前が行くのは病院だ」と暴言を浴びせ、生徒は精神的に不安定になり、「死にたい」と漏らすのを友人が聞いている。
2か月後の昨年12月(2018年)、この担任から父親と一緒に学校に来るように呼び出された。担任は「こんな状態では思い余って飛び降りとか暴力とかが出たら困る。学校をやめてもらった方がいい」と言ったという。退学届の書類を渡されたため提出し、10日間休学した。
「このままでは安心して学校生活を送れない。先生を辞めさせて」
担任教諭の問題行動はこれだけではなかった。生徒の好き嫌いが激しく、嫌いな生徒には厳しく当たる傾向があったようだ。「言っていることがとにかく理不尽で、何でこんなことで怒るのかみたいな。1年生の子が体育座りしているところを蹴られるのを見たことがあるし、聞いた話では頭をしばかれた子もいた」と話す上級生もいる。
さすがに、生徒たちも黙っていられなくなった。2人の教諭に事情を話すと、担任教諭の問題行動を調査し文書にまとめて高橋等校長に提出した。しかし、高橋校長は担任教諭に注意しただけだったため、生徒と保護者が先月26日(2019年2月)、嘆願書を県教育委に提出した。
嘆願書は「このままでは生徒が安心して学校生活を営める状況にない」と糾弾したうえで、「(担任教諭には)生徒の前で学校長立ち会いの下に謝罪すること、懲戒免職にすること。人事を含めた大幅な環境改善を行うこと」を求めていた。
嘆願書を受け、問題教諭は生徒の前で謝罪はしたものの、新学期の異動に合わせて他校へ移っただけで決着が図られた。収まらない生徒たちは、「学校を移っただけでは同じことを繰り返す」と納得していない。
教育評論家の尾木直樹氏は「学校や県教委は(処分の)意図がなんなのか明確にすべきで、最低だと思う」と話す。
デープ・スペクター(テレビプロデューサー)「前の時代に止まっているように感じますね。丸刈りにする根拠も権利もない。生徒たちは結束して嘆願書を出したことで、立派な社会勉強になったと思う。若い人が動けばどうにかなるというテストケースになるかもしれません」