児童相談所建設に反対する東京・南青山の住民、外国人の研修施設の建設に猛反発する大阪・摂津市の住民...。社会的に弱い立場の人たちを遠ざける「社会の分断化」を巡る議論はたびたび浮上する。
社会的弱者を救うのは、誰の役割なのか――。日本の行く末を探るため、『とくダネ』コメンテーターで社会学者の古市憲寿氏がアメリカを取材した。
まず訪れたのは、フロリダ州タンパ国際空港から車で約30分、「性犯罪者だけが住む町」パレス・モービル・ホーム・パークだ。縦100メートル、横250メートルの一角に、平置きのプレハブ住宅が立ち並び、性犯罪者80人が暮らしている。
性犯罪歴は誰でもアクセスできるデータベースに
フロリダ州では、性犯罪者は出所後も学校や公園近くなど子どもが集まる場所には住めない。誰でもアクセスできるデータベースには、名前や住所、顔写真入りで登録されてしまい、一生消えることはない。住所を打ち込めば、半径1.5キロに住む性犯罪歴のある住民が顔写真入りで出てくる。
児童ポルノ写真5枚をPCに所持し逮捕された男性は、GPSなどの装着が義務付けられ、24時間行動が監視されている。エリアから出ると電話がなり、居場所を確認される。「窮屈だ」と話す一方、隔離された生活を「安心なんだ。このエリアで守られているから」とも言う。エリア内にいれば、社会や警察からの厳しい目から逃れられるからだ。
金持ちだけが独立して作った街も 追いやられた貧困層は...
古市氏は、ジョージア州にある富裕層が独立して作った街、サンディ・スプリング市も訪れる。自分たちの潤沢なお金を自分たちのためだけに使い、美しい街並みや、豊かな自然、ゴージャスな市庁舎、贅沢なサービス、渋滞のない快適な道路を保っている。
一方、貧困層は「最後の場所」と呼ばれるバンクヘッドというエリアに追いやられていた。ホームレス同然の人ばかりだ。そこで暮らす男性は「金持ちと貧しい人が交わることはない。人としてではなく、場所で区別された気がするよ」と話す。
サンディ・スプリング市の産みの親とも言える、富裕層独立を指揮したオリバー・ポーター氏は「政府がお金のある人からない人に渡すというやり方では両者が苦しむことになる。お金をもらえば、稼ぐ動機を失ってしまいます」と話した。
古市「格差は悪い、分断は良くないと僕らは考える。でも、実際アメリカを見てみると、弱者側も分断を望んでいると思える面もあった。元性犯罪者の人も『偏見もなく、再犯の危険性もなく、安心だ』と言っていました。分断したまま安定してしまっている感じです」
司会の小倉智昭「社会復帰だとか更生だとか、全く考えてないよね」
中江有里(女優・作家)「強制なのか、そこで生きていくしかないのか...。もう1つの社会を作り出していて、安心している。それに対して何を言っていいのか、考えてしまいました」