15日(2019年3月)、ニュージーランド・クライストチャーチでのムスクで銃を乱射し、50人を殺害、34人を負傷させたブレントン・タラント容疑者(28)。彼は自ら頭に設置したカメラで犯行前後の16分55秒を撮影し、生配信していた。
銃撃シーンなどを除く、4分25秒の画像を分析すると、男の常軌を逸した差別思想が見えてきた。
「さあ、パーティの始まりだ」と車に乗り込んだ男は、「みんな覚えておけよ。チャンネル登録しておけ」とつぶやき、車を発進させる。
「自分に近い」と英国のファシストを崇拝
車内に流れる軽快な曲調の音楽は、1990年代に起きた旧ユーゴスラビア紛争の際、セルビア人勢力が流していたもの。イスラム教徒の殺害を指示した、指導者をたたえる内容だという。
続いて流れたのはイギリスの軍歌。テロ事件に詳しい軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は、「彼は『自分に非常に近い』と、大戦前に有名だったイギリスのファシストを崇拝している」とその理由を分析する。このファシストの名前は、74ページも及ぶ犯行声明にも登場していた。
その後、車は目的地のムスクに到着。映像には助手席やトランクなどに「KEBAB REMOVE」と書かれた計6丁の銃が映っている。「KEBAB」はイスラム教徒などへの蔑称で、「REMOVE」は「取り除く」や「殺す」の意味だ。この直後、男は2分間にわたり銃を乱射する。
裁判所に出廷した際には、右手の親指と人差し指で円を作った。海外メディアによると、白人至上主義者がする「ホワイトパワージェスチャー」だという。
幼いころ、両親が離婚し、ゴミ収集業の父親に引き取られた。2011年に父親が死んでから、ジムトレーナーをやめ仮想通貨で稼ぎ、世界を旅行していた。いつ、どの時点から差別思想に毒されていったのか......。
司会の小倉智昭「銃乱射事件の容疑者は撃ち殺されるか、自殺するかで、逮捕されるのは珍しい。犯行の動機を解明できるかも知れません」
古市憲寿(社会学者)「同じく穏やかなイメージのノルウェーでも、7年前に死者90人を超すテロがありました。その時ノルウェーでは、犯人を憎悪すると憎悪の連鎖になってしまうと、寛容や愛情という価値観での対応が求められていると言われたものです。今回もいかに社会が寛容でいられるかが問われています」