1日(2019年3月)に開かれた日本アカデミー賞授賞式で、是枝裕和監督の「万引き家族」が作品賞、監督賞など8冠を達成した。カンヌでの最高賞「パルムドール」(2018年5月)以来数々の賞を受けてきたが、この日の白眉は最優秀助演女優賞を受けた故・樹木希林さんが残した数々の言葉だった。
司会の西田敏行さんは、「あなたを真似たいのですが、あなたの真似はできません。唯一無二の素晴らしい先輩でした」といった。
「時が来たら、誇りを持って脇にどけ」
代理で登壇した娘の文筆家・内田也哉子さんの言葉がよかった。
「生前母がよく口にしていた『時が来たら、誇りを持って脇にどけ』というのが、文字通り今日をもってできると思います」
「6年前に『わが母の記』で最優秀主演女優賞をいただいた母が、この舞台で、『これをいただくと来年司会でしょ。私、冗談抜きで全身がんなんで、来年の仕事約束できないんですよ』と口を滑らせました。私が『お祝いの席でなぜそんなこと言うの』と言うと、母は平然と『いつ死ぬかわからないんだから、先方にもご迷惑でしょ』と返してきました」
「つくづく母は、なんて真っ当な心根を持ったアナーキストなんだろうと思いました」
共演者たちも語った。
松岡茉優さんは「監督はあんまり一発をOK出さない。ヨーイの時に希林さんに『どうせ一回で終わんないんだから、リハーサルみたいにやりゃあいいのよ』といわれて、楽にやったら一発OKでした」
是枝監督「いつも希林さんが正しいんですよ。(脚本賞について)プロットを読んでいただいて、『こう言うことよね』とか、僕が書いていないセリフをふっと口にされて、それを脚本を書いていくという共同作業だったので、希林さんと一緒にもらった賞と思います」