新女王・大坂なおみは心技体をこうやって向上させた 進化のヒミツをデーターから解き明かす

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   去年(2018年)9月の全米オープンに続き、1月26日(2019年)全豪オープンを制して、女子テニスの世界ランキング1位に躍り出た大坂なおみ(21)。その勝利の秘策を探った。そこには「サーブを前で打ち返せ」「そのために下半身を鍛えろ」という進化の日々があった

   全豪決勝戦の相手は、サウスポーからスライスサーブを繰り出すペトラ・クビトバ(チェコ)。前日、コーチのサーシャ・バイン氏が明かしたのは「一歩前に出てコートの中でプレーする」ことだった。それだけ「強く打ち返す準備を重ねてきた」という。

ラケットを握る時間を減らし、「いっぱい、ひたすら走った」

   その決勝戦。第1セット、大坂はベースラインの内側でサーブを打ち返そうとしたが、クビトバのサービスが予想以上に切れて、すぐには対応できなかった。一方で、自分のサービスゲームは思うようにキープできない。これを大坂は粘り強いラリーで補い、一進一退の展開に持ち込んだ。

   この1年、大坂はフットワークの向上を目指して下半身の強化に努めてきた。専属トレーナーのアブドゥル・シラー氏は「サッカー選手並みの敏捷性とスタミナが必要だ」と、オフシーズンにラケットを握る時間を減らし、早朝から走り込み、短・長距離走も取り入れた。

   大坂は「いっぱい、ひたすら走った」と言う。体重を1年で10キロしぼり、筋力トレーニングにも取り組んだ。課題といわれたバックハンドが飛躍的に鋭さを増し、左右中、どの位置からも得点できるようになった。

   決勝戦第1セットは苦戦したが、それでも大坂は前へ出て打ち返すスタイルを変えなかった。これがタイブレークで実を結ぶ。クビトバのサービスをバックリターンで攻略し、勢いに乗ってこのセットを奪った。

「自分をコントロールし、成長し続ける姿は素晴らしい」

   第2セットはサーブで攻め、チャンピオンポイントまでこぎつけたが、ここからミスが出始めた。まさかの逆転に「なんでやねん!」と大阪弁で悔しがった。大坂は涙を浮かべ、タオルをすっぽりかぶってトイレタイムへ向かった。「今までなら厳しい展開でしたが、切り換えました」と元テニスプレーヤーの杉山愛さんは言う。1分40秒後、コートに戻った時は、激しい表情は消えていた。

   勝負の第3セット。ベースラインより前に出る攻めの姿勢を崩さず、リターンが決まっていった。大坂は「ただ集中しようとした」という。その大坂を相手のクビトバは「新しい試合が始まったかのように落ち着いていた」と受けとめた。

   集中力も高まった。ファーストサーブの確率は第1セットの56%から64%に上がった。サーシャコーチは「コートで無表情になって、自分をコントロールし、成長し続ける姿は素晴らしい」と評した。大坂は「リラックスして楽しもうとした。相手は強い選手だから、謙虚に受け入れようと考えた」と振り返る。磨いてきたテニスが結実しての優勝と世界ランキング1位だった。

   杉山愛さんは「攻撃テニスで攻め勝つ姿勢を貫いた」と見た。この大会で大坂はサービスエースの数でトップ、サーブの最高速度192キロがベスト4の選手でも群を抜くだけでなく、リターンエースでも1位など、これまでの「ビッグサーバー」から「オールラウンダー」の選手に変貌を遂げた。

   今後は、5月に全仏オープン、7月には全英オープン(ウィンブルドン)がある。全仏オープンは土のコートで滑りやすく、フットワークの真価が問われる。「芝のコートだから、この方が大坂向き」といわれるウィンブルドンでは、優勝経験のあるクビトバと再び対戦するかもしれない。

   4大大会制覇は「難しいが可能性はある」と杉山さんはいう。「100%の力を互いに発揮して戦ったら、大坂は誰にでも勝てる。世界ナンバーワンも通過点で、まだ伸びる」という評価にもうなずかせるだけの輝きが、今の大坂なおみには確かにある。

   文・あっちゃん

   ※NHKクローズアップ現代+(2019年1月28日放送「新女王・大坂なおみ~データで見る進化のヒミツ~」)

   

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