「自分をコントロールし、成長し続ける姿は素晴らしい」
第2セットはサーブで攻め、チャンピオンポイントまでこぎつけたが、ここからミスが出始めた。まさかの逆転に「なんでやねん!」と大阪弁で悔しがった。大坂は涙を浮かべ、タオルをすっぽりかぶってトイレタイムへ向かった。「今までなら厳しい展開でしたが、切り換えました」と元テニスプレーヤーの杉山愛さんは言う。1分40秒後、コートに戻った時は、激しい表情は消えていた。
勝負の第3セット。ベースラインより前に出る攻めの姿勢を崩さず、リターンが決まっていった。大坂は「ただ集中しようとした」という。その大坂を相手のクビトバは「新しい試合が始まったかのように落ち着いていた」と受けとめた。
集中力も高まった。ファーストサーブの確率は第1セットの56%から64%に上がった。サーシャコーチは「コートで無表情になって、自分をコントロールし、成長し続ける姿は素晴らしい」と評した。大坂は「リラックスして楽しもうとした。相手は強い選手だから、謙虚に受け入れようと考えた」と振り返る。磨いてきたテニスが結実しての優勝と世界ランキング1位だった。
杉山愛さんは「攻撃テニスで攻め勝つ姿勢を貫いた」と見た。この大会で大坂はサービスエースの数でトップ、サーブの最高速度192キロがベスト4の選手でも群を抜くだけでなく、リターンエースでも1位など、これまでの「ビッグサーバー」から「オールラウンダー」の選手に変貌を遂げた。
今後は、5月に全仏オープン、7月には全英オープン(ウィンブルドン)がある。全仏オープンは土のコートで滑りやすく、フットワークの真価が問われる。「芝のコートだから、この方が大坂向き」といわれるウィンブルドンでは、優勝経験のあるクビトバと再び対戦するかもしれない。
4大大会制覇は「難しいが可能性はある」と杉山さんはいう。「100%の力を互いに発揮して戦ったら、大坂は誰にでも勝てる。世界ナンバーワンも通過点で、まだ伸びる」という評価にもうなずかせるだけの輝きが、今の大坂なおみには確かにある。
文・あっちゃん
※NHKクローズアップ現代+(2019年1月28日放送「新女王・大坂なおみ~データで見る進化のヒミツ~」)