タレントの画像を無断で加工・使用して架空の体験談などをでっち上げて商品を宣伝する「フェイク広告」が、インスタグラムやフェイスブックなどに横行している。こうした広告を信用して月額6980円でダイエットサプリを購入した東北地方の大学生は、「効果が見られないので解約したいと伝えたかったのに、電話に出てくれなくて困っています」と訴えた。
この広告主であるメーカーの社長は20代の大学生で、「広告は30社ほどの仲介業者に依頼しており、その中身には関わっていない。僕らメーカーとしては、だれがどんな記事を書いているか追い切れません」と説明した。その仲介業者のうちの1社の社長は「フェイク広告が紛れ込んでいたのは事実」と言うが、なくすのは難しいと話す。
「フェイク広告を作ったのは契約している広告制作者。彼らは周りもやっているからと、売り上げが上がる芸能人を使ったフェイク広告を軽い気持ちで作っている。フェイク広告はなくしたいが、チェックが行き届かない」
フェイク広告制作者は地方の小さなウェブ広告業者で、「クローズアップ現代+」の取材を拒否した。
インチキでも商品買わせれば成果報酬
インスタグラムを運営するフェイスブック・ジャパンの担当役員は、「すべての広告は掲載前にAIと人の目を使って審査している」と話したが、フェイク広告はその審査をすり抜けているようだ。
取材をしたNHKネットワーク報道部の田辺幹夫記者は、「インスタはユーザー数3000万人の大きなメディアなので、日々大量の広告が出されます。AIや人の目を通しても、チェックは完璧ではありません」と話す。「広告主や仲介業者も、まずい広告が出ていることは把握していますが、人手が少なく、チェックする責任を果たせてないんです」
こうしたフェイク広告は、SNSだけではなく、地方紙のウェブサイト記事にも紛れ込んでいた。
フェイク広告が横行している背景には、広告記事を見て商品が購入されると、広告記事制作者に成果報酬が支払われるアフィリエイトという仕組みがあるからだ。広告記事の書き方を教えるセミナーも開催され、主婦、学生、副業目的の社会人で大盛況だという。
田辺記者「より多くの報酬を得ようとして、フェイク広告を掲載する場合が出てくるという証言もありました」
「情報商材」広告の裏に闇人脈
さらに、消費生活センターへの相談が急増しているのが、「スマホで簡単に収入が得られる」と金儲けのノウハウを教えたり、資料を買わせる「情報商材」と呼ばれるネット広告被害だ。情報商材を扱うある会社に消費者庁が聞き取り調査を行ったところ、広告に登場する「私もこれで稼いだ」という人は偽名で、体験談もすべて虚偽であることが判明した。この会社は半年間でおよそ6億4000万円の売り上げがあったという。
クロ現取材班がトラブルに遭った人に情報提供を呼び掛けたところ、たくさんの声が集まった。その中で目立ったのが、K氏という人物が出演している動画を見て購入したケースだった。K氏を直撃すると、「たしかにちょっと盛っているところはあるが、騙そうとは思っていない。自分はステージで歌う歌手の役割で、シナリオやコメントを考えるのは別のプロモーターだが、その人物の名は絶対に言えない」と話した。
情報商材ビジネスには、表に出てこない「黒幕」の企画立案者がいるのだ。かつてプロモーターをしていたという人物は、儲けは桁違いに大きいと嘯く。「1つの案件で10億円を売り上げることもある。社長や幹部はタワーマンションの高層階に住み、ランボルギーニなどの高級車を乗り回している。20代が圧倒的多数で、反社会勢力的な雰囲気があった」
消費者庁は、誰でも投資した以上に儲けられるという話は嘘だと疑ってほしい注意を呼びかけ、「消費者ホットライン(188)」に相談してほしいと呼び掛けている。集団訴訟を支援する「enjin」というネットプラットホームもある。
武田真一キャスター「広告の信頼性回復のため、業界を挙げて取り組んでほしいですね」
*NHKクローズアップ現代+(2019年1月22日放送「追跡!"フェイク"ネット広告の闇」)