何気なく投稿するSNSが犯罪グループに目をつけられ、思わぬ被害につながる......。こんなケースが広がっている。
投稿画像から住まいや生活パターンをつきとめられ、襲われる。留守時間を狙った泥棒事件は、届け出があっただけで160件、被害総額3000万円を超す。今や典型的な犯罪被害の入り口が、多くの人が不用心・無警戒に使うSNSなのだ。
こうした犯罪グループのメンバーは、NHKの取材に「ターゲット選びは、まずSNSからだ」と話した。たとえば、高級ブランドを着て投稿している人を探す。レアものの衣服を着て、うしろに高級外車も写る男性がいた。この人の書き込みに「電車が遅れている」とあれば、そこから膨大なダイヤ遅れのデータを調べて、路線を特定していく。
グーグルアースの上空写真から自宅を特定できる
うしろに映っていた公園も、有力な手掛かりになる。「こういうモノで家(住居)がわかる」と、メンバーはいう。グーグルアースの上空写真も使って絞り込むのだそうだ。
飲食店の映像も重要情報になる。壁にメニューが貼ってあれば、アップしていくと料理名がわかる。特徴的なメニューならなおさら有効だ。カウンターが映っているだけでも「カウンターのある店」ということになる。投稿者が何の意識もなく載せた切れ切れの情報や写真から、たとえば「もつカレー、ゆでたん、カウンター、東京」で検索し、カモを絞り込む。
天気情報も使われる。「いま雷が鳴った」の一言から、雷雲の記録を探り、所在地や投稿者の行動範囲がピンポイントでつかまれる。自分や子どもの学校の創立記念日も要注意だ。学校がばれたら日常の行動パターンを知られるきっかけになりかねない。
犬の散歩風景からも、よく通るルートを知られる。投稿に帰宅時間などを入れたことからストーカー被害に結びついた事例もある。友人リスト、出身校や出身地なども悪用される危険がある。
犯行の下準備も、犯罪グループは「スマホ1個でできちゃう」という。
ターゲットの住居を特定した犯罪グループは、防犯カメラの位置も調べていた。犯行のメンバー集めにもSNSが使われる。「『おカネが稼げます』とツイートすれば連絡がくる」そうだ。互いの素性を知らなければ、仲間が警察に捕まっても捜査の手は及ばない。「自分が逃げられるのはSNSのおかげだ」というのが彼の実感だ。
こうして集まった人数は100人を超すとも言った。有罪判決を受けたことがあるメンバーの1人は「SNSだから罪悪感が薄れて、気楽にやれる」と語った。