整った顔立ちとか均整のとれたスタイルなど、画一的な外見の美しさにとらわれず十人十色、ありのままの自分の魅力を認めるボディー・ポジティブの考え方が広がっている。
かなり肥満の渡辺直美を世界的アパレルメーカーがモデルとしてCMに起用したり、お笑いコンビ「トレンデイエンジェル」の斎藤司が薄毛を武器にお笑いの世界で活躍している。
女子4人組バンド「CHAI」が歌う――コンプレックスはアートなり
名古屋市出身の女子4人組バンド「CHAI」は代表曲「N.E.O」で、「コンプレックスはアートなり」「目ちっちゃい、鼻低い、くびれていない、足太い、オーライ!NEOかわいい」と歌う。
メンバーは、マナとカナの双子、同級生のユナとユウキ。なぜコンプレックスを歌うようになったのか。マナとカナはいじめに遭った辛い思い出がある。「繰り返しのいじめがすごくて、怖すぎて学校が大嫌いになった」と話す。
引っ込み思案になった彼女たちが、自分を表現できると感じたのが音楽だった。「自分はこうだ、私はこうなりたみたいなのが、多分、音楽だったんだと思う」(マナ)、「夢がめちゃくちゃあった」(カナ)という。彼女たちが自分らしくいられる場所として見つけたのが、ライブハウスだった。
CHAIの音楽との出会いで人生が変わった女子高生がいる。高校2年生の夏花は、中学時代に男子生徒からいきなり「ブス」と言われ、その一言がコンプレックスになった。外見を過度に気にするようになり、人前に出ることを避けるようになった。
でも、CHAIの音楽で心のしこりが吹っ切れた。「CHAIは見た目、美人とかではないのに、すごくかわいくて、そのままでいることが一番かわいくて、『違いが良い』というのはすごくその通りだなと思いました」
ブスと言った男子生徒にいま何と言いたいかと聞かれ、「ブスじゃねえし、NEOかわいいと言ってやりたい」という。
渡辺直美「痩せようと思ったこともあるけど、いまはこの体がいとおしい」
キャスターの武田真一が渡辺直美に「CHAIの『ありのままを肯定するぞ』というメッセージをどう感じますか」と聞く。
「(私は)今でもコンプレックスはあります。耳がちっちゃいなとか。若い時には無理やり痩せなきゃと思ったし、太っている人は何をしてもダメなんだと思いました。ピンクを着たいけど、ピンクは膨張色だからもっと太って見える。だから紺とか黒をあえて着ていました。これをやっていると、どんどんストレスが溜まってきます。
でも、なんで太っている人はこんな目に遭わなきゃならないのかと思い始めてからは、自分の好きな色を着るようになった。自分の容姿に自信を持っている今は、すごくいとおしいと思う時があります」
斎藤司も「こういう頭になり始めたのは23歳ごろから。すごくアーとなったんですけど、自分には幸い明るい部分があって、この薄毛をスタンダードにしようと・・・」
ボディー・ポジティブという新しい生き方が広がっていることはわかったが、「デブだ」「ハゲだ」と笑いものにする側の偏見を、番組ではもっと批判して欲しかった。
*NHKクローズアップ現代+(2019年1月9日放送「コンプレックスも武器になる?!~時代は"ボディー・ポジティブ"~」)