17日から始まった週のNHK連続テレビ小説「まんぷく」では、主人公の立花萬平(長谷川博己)がまたGHQ(連合軍総司令部)に逮捕された。これで3度目だ。
18日朝のNHK「おはよう日本」でも、キャスターの高瀬耕三アナが「これで3回捕まっています。こんな朝ドラ、今までなかったですよね」と驚いていたが、モデルの日清食品創業者・安藤百福氏は、本当に3回も捕まったのだろうか。調べてみると――。
1回目と3回目は事実だが、2回目は...
結論から言うと、1回目と3回目は事実だが、2回目はドラマのオリジナルストーリーだ。1度目は、ドラマとまったく同じ1941年(昭和16年)、百福氏は軍需工場の資材を横流ししているとあらぬ嫌疑をかけられ、憲兵隊に捕まった。45日間拘留され、ひどい拷問を受けた。この時の拷問で内臓が傷つき、兵役にとられなかったのはドラマと同じだ。知人(ドラマでは世良勝夫=桐谷健太)に助けられたのも事実。
ドラマでは、2回目の逮捕は戦後、泉大津で塩業を営んでいる時に、社員たちが魚獲りに手りゅう弾を使ったことが、反逆罪とされGHQに捕まったことになっている。これはウソ。ただ、大勢の若い男を集めて行なった塩業事業では、たびたび酒宴を開いて男たちがバカ騒ぎをしたため、周辺の住民から苦情が警察に来たようだ。香田タカ(岸井ゆきの)のモデルである百福氏の姪の回想によると、男が松の木に登って製塩所を覗き込んでいたため、「何してるの?」と聞くと、「シー」と怒られたそうだ。警察が見張っていたらしい。
実際の百福氏は塩業以外の事業にも成功しており、カネには困っていなかった。従業員の食事の魚を獲る漁船まで購入していたから、手りゅう弾を使うのはあり得ない。
戦時中は「植民地人」、戦後は「戦勝国民」と複雑な立場
3回目の従業員に奨学金を与えたことが「脱税」になるとして、GHQに捕まったのは事実だ。ネタバレになるので省略するが、当時、日本は税収が少なくて困っており、「見せしめ」にされた可能性が高いという。
百福氏はもともと台湾に生まれた。戦争中は「植民地人」として差別される立場もあって、「軍の物資」横流しという冤罪を着せられた。しかし、戦後は「戦勝国民」として逆に羽振りがよかったことから、逆に日本人同業者から恨みを買う立場になったようだ。「まんぷく」ではそうした複雑な背景を省略、夫婦愛の物語としてスッキリ描いている。(テレビウォッチ編集部)