いじめでインターネット上に実名を公表された高校生の母親が、プライバシーを侵害されたとして投稿者の情報開示を求めていた裁判で、東京地裁は10日(2018年12月)に開示を命じた。
被害者の男子高校生(16)は、埼玉県川口市の中学校に入学した3年前からいじめられるようになった。入部したサッカー部のグループLINEから外されたり、LINE上で悪口を言われたり、暴力を振るわれたりしたという。サッカー部の顧問からも体罰を受け、自殺未遂に及んだこともあった。
昨年10月からは、インターネットの掲示板で「虚言癖があるから信用できない」「いじめられてるんじゃなくて嫌がられてるんでしょ」「靴の裏に悪口を書かれたそうですね。自作自演じゃないんですか」などと匿名で2000以上の誹謗中傷を書き込まれた。
母親に対する悪口や、男子高校生の実名も書かれ、ネット上の誹謗中傷は卒業後も続いたという。男子高校生は「つらかった」と語る。
「原告のプライバシーを明白に侵害するものである」
母親は今年6月(2018年)、プロバイダー3社に対し、掲示板に書き込みをした人物の名前や住所などを開示するよう求める裁判を起こした。東京地裁は、「原告のプライバシーを明白に侵害するものである」として、書き込んだ人物の氏名や住所などの情報開示を命じる判決を出した。
「スッキリ」に対し、プロバイダー3社のうち2社は「必要な対応を検討する」「判決に従って開示する予定」と回答している。
匿名でエスカレートする誹謗や中傷
母親は「匿名だからばれない、だから書く内容がエスカレートするんだと思います。匿名で書いたって個人が特定されるということを、多くの方に知っていただき、抑止につながれば」と話す。
男子高校生も「いろんな人に(判決を)知ってもらい、いじめをなくしてほしい」と話した。
モーリー・ロバートソン(ジャーナリスト)「ネットの書き込みは、群集心理にかられて野次馬や娯楽として行われることが多いので、今回の判決は抑止として有効だと思います」
下川美奈(日本テレビ解説委員)「一方で、パワハラの告発など匿名でしなければならない人たちにとって、行動を抑制することにならないといいなとは思いますね」