今年9月(2018年)に関西地方を直撃した台風21号で、浸水被害を受けた兵庫県芦屋市の高級住宅街のハザードマップ(被害予測地図)に測量ミスがあり、「安全だというから購入したのに」という住民とマップを作成した県がもめている。
兵庫県が大阪湾沿いを埋め立てて開発した南芦屋浜地区は、台風21号による高潮が護岸を超えて押し寄せ、17棟が床上浸水、230棟が床下浸水の被害を受けた。自治会の孝岡知子会長は「真っ暗な中、外を見てみると川のような状態になっていた」と話す。20センチの地盤地下も確認された。
護岸を実際より30センチ高く設定
この一帯は、県が作成したハザードマップでは、浸水の可能性が低いことを意味する白い表示になっている。「浸水はしないということで安心して購入した」と50代の住民の男性は話す。
ところが、今回の浸水被害後、ハザードマップを作成する際に護岸の高さを間違えて計測し、実際より30センチ高く設定していたことがわかった。ただ、正しい数値でハザードマップを作成したとしても、南芦屋浜地区は白い表示のままだという。
住民「安全ですといって売るのは詐欺行為」
2日(2018年11月)に開かれた住民説明会で、県は「測量会社の誤りに気付かず、申し訳ありませんでした」と謝罪したが、「想定を超える高波が発生して浸水が起きた」として、計測ミスと浸水被害とは直接的な関係はないと説明した。
住民からは「安全ですと言って売るのは詐欺に近い行為」「600億円で県庁を建て替えるなら、われわれのところにきちんと出して」などと憤る声が相次いだ。「家を買い戻してくれ」と要求する人もいた。
宋美玄(産婦人科医)「県が造成して販売する時に、『ここは水害のない街ですよ』とどれぐらいうたったか、ということですよね」
古市憲寿(社会学者)「海沿いの街は景観などいい面もありますが、海風の問題や高潮などの危険もある。どこに住むにしても、ある程度リスクを考えて住むことは仕方ないのかなと思いますけどね」