各地の自治体が地元企業の支援のために、ビジネスセンスの高い人材を「まちのコンサルタント」として高報酬で雇うケースが増えている。「ビズ・モデル」と呼ばれる仕組みの仕掛け人は、富士市産業支援センターの小出宗昭センター長だ。元銀行員で、10年前から静岡県富士市で「カネより知恵を出す」「面談重視(1時間一本勝負)」「問題点より、いいところ探し」などをモットーに、企業コンサルティングを行っている。
「カネがかからないのに成果が出る」などと評判になり、20の自治体がビズ・モデルを導入した。雇うコンサルタントの報酬は基本的に1200万円で、1年契約。成果が出なければ、報酬の減額や契約打ち切りもある。
「(1200万円は)地域においては驚きの金額になるが、プロを呼ぶには必要。だからこそ1年契約で、厳しく評価なんです」と小出さんは話す。
外資系コンサルから熊本・天草市の中小企業支援センターへ
ビズ・モデルのひとつ、熊本県天草市の中小企業支援センターは「新商品を開発したい」「いい宣伝方法はないか」といった相談を無料で受け付ける。すでに天草の企業の2割にあたる1000社が相談に訪れ、うち8割が「成果があった」と評価し、300人の雇用を生み出したという。
センター長の内山隆さんは3年前に着任した。それまでつとめていた東京の外資系大手コンサルティング会社から、単身赴任で転職したという。「東京にいたときは、仮想空間にいて、虚業のようだった。いまは生きる実感につながっています」と話す。
内山さんの成果のひとつは、喫茶店で細々と出していた長崎の壱岐牛を、「ハンバーグサンド」として売り出し人気商品にしたことだった。しかし、相談企業への最近のアンケートでは、不満足が前回の0%から5%に増え、支援策が「ネット活用」に偏ってるという回答が目立った。このため、あらたな契約は1200万円から2割減額されてしまった。
小出さんは「厳しい評価ですが、本来こうあるべきだと思います。公の産業支援は税金で行われているから、厳しくやらなければいけない。そういう流れのなかで、行政が厳しく判断するのはとてもいいことではないでしょうか」と納得している。
*NHKクローズアップ現代+(2018年10月23日放送「年収1200万円!転職して挑む企業支援」)