乳酸は疲労の原因と見られてきたが、リオオリンピック競泳の金メダリスト、萩野公介選手は、「みなさん、間違ってますよ。乳酸は友だちです。乳酸を意識したトレーニングで金メダルをとりました」と言うのだ。
乳酸が悪者になったのは100年前、イギリスのノーベル賞学者が「疲労した筋肉に乳酸の増加が見られる」という論文を書いたからだ。以来、定説になり、教科書にも「疲労は乳酸の蓄積などが原因」と書かれてきた。
ところが、最近の研究で、乳酸は「エネルギーになる」「運動能力を高める」「持久力の向上につながる」と変わった。東京大大学院の八田秀雄教授は「乳酸革命といってもいい」という。どういうことか。
筋肉には、速筋線維(スピードに関わる)と遅筋線維(持久力)とがあって、体を使うと速筋から乳酸が出る。すると、遅筋からミトコンドリアが出て、乳酸を食べるように取り込みエネルギーになる。乳酸が増えるとミトコンドリアも増え、持久力がアップするのだという。
乳酸増やすウォーキング術
問題は、どれくらいの運動が効率的なトレーニングになるかだ。武田真一キャスターが東大でその実験台になった。ウォーキングマシーンで運動量と乳酸が出る度合いを測る。毎分100メートルの「散歩の早歩き」程度では、乳酸の量は歩く前と変わらなかった。歩く速さを変えて測定してみる。
武田キャスターは毎分145~160メートルから乳酸値が急激に増えはじめた。これを「乳酸いき値」というのだそうだが、ここを超えるところで運動をすると、乳酸が増えミトコンドリアも増える。
武田「160メートルはややきついですが、ペースを保てます。190メートルだと足がついていけない、続けられません」
この中間で歩けばいいわけだ。八田教授は「乳酸値をうまく活用すれば、短い時間で効果があげられる」と説明する。