定年移住ブームのなか、奈良県天理市のある町に移住したAさん(70)が自治会とのトラブルに見舞われ、弁護士会が「人権侵害」と認定して是正勧告を出す事態にまで至っている。いったい何があったのか。
Aさんは奈良県内の別の市から約25年前、自然に囲まれて暮らしたいと天理市内に移住した。ところが、土地を購入して家を建てる段階になって、自治会長から電気を引くための電信柱を立てることを禁じられたため、隣町から電気を引かせてもらうことにした。現在もごみは隣町に捨てている。
弁護士会と市は「人権侵害」で是正勧告
Aさんは「入った時からほとんど誰も口をきいていません。いっさい寄せ付けないんです。祭りにも呼んでくれない」と話す。なぜ村の行事に参加できないのかを尋ねたところ、「参加させたら村としての財産をとられる可能性があるから」と自治会側は答えたという。
Aさんは自治会費にあたる協議費を年間1万3500円ずつ20年以上払い続けてきたが、5年前に豆腐店に買い物に行って名乗ったところ、「売らへんからお帰り」と言われておからを投げられたことがあり、それを機に支払いをやめたという。
昨年(2017年)末、Aさんは地元の弁護士会に人権侵害を訴え救済を申し立て、協議費の返還を求めた。奈良弁護士会は「人権侵害にあたる」と認定し、自治体に是正勧告を出した。
自治会長開き直り「差別はしてない。自治会費は返さん」
自治会側はなにを考えているのだろう。自治会長は「村として決して差別はありません。あくまで勧告なので協議費の返金に応じるつもりはない」と開き直ったままだ。天理市は「許容できる状況ではなく、是正に向け真摯に話し合いを行っていきます」としている。
『誰も教えてくれない田舎暮らしの教科書』の著者である清泉亮氏は、移住トラブルを避けるポイントとして、「移住前に隣町に半年ぐらい住んでみるといろいろ見えてきます。移住後は噂話や愚痴を近所の人にはしない方がいい」とアドバイスする。
移住の経験を持つ高木美保(タレント)「私も地元の病院に入院して退院してきたら、すでに入院していたことが知れわたっていました」
玉川徹(テレビ朝日解説委員)「田舎ってそういうものですよ。昔から住んでいる人たちの密接なつながりがある。そこに入っていくのは大変なことで、移住はすべてが楽園ではないということです」