重度知的障害の長男 オリ監禁25年・・・父親の悲痛「他の家族の生活を犠牲にできなかった」

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   重度の知的障害のある長男(42)を25年以上も檻に監禁してきた父親(73)が、監禁の罪で執行猶予つきの有罪判決を受けた。兵庫県三田市の事件。保護された長男は片目を失明、もう一方の目もほとんど見えない状態だった。その父親がNHKの取材に応じた。

   監禁していたのは、自宅の庭にある4畳半ほどのプレハブ小屋だった。檻はもうなかったが、高さは1メートルほどで、立ち上がることもできない。ペット用のトイレシートを敷いて、外に出すのは2日に1回だったという。父親は言う。「他に方法がなかったんやろか。ずっと考えてます。いまだに答えはないです」

市役所に相談してもケンもホロロ

   建設会社で働く父親は29歳で結婚し、4人の子を育てた。長男は2歳の時に、成長しても会話ができないほどの知的障害だとわかった。休日のたびに家族で旅行をするなどしていたが、異変が起こったのは長男が13歳の時だった。母親や弟たちの腕に噛み付くようになったのだ。

   安心して仕事に行けない。一時的に預かる施設を探したが、空きがなかった。ガラスを割る、大声を出す、暴れるなど暴力はエスカレートし、どう防ぐかを考えた。結論が座敷牢だった。大工に檻を作ってもらい、父親が不在の時は閉じ込めて鍵をかけた。「いいこととは思わないが、他の5人の生活を犠牲にするんですか?」

   当時、三田市役所に相談した記録が残っていた。「不在の時、外から鍵をかけている」と報告したが、市は自治体が関わる問題とは受け止めなかった。事件を調査した第三者委員会は20日(2018年9月)、森哲男・三田市長に結果を報告した。「組織として管理体制が機能していなかった」「職員間の情報共有を欠き」「積極的に対応していない」と厳しい。

   当時の職員は、調査に「申し訳ないが記憶にない。部屋に鍵をかける人はたくさんいた」といい、市の幹部も「なんとかしないとという認識がなかった。今もスタンスは変わらない」と答えていた。

   委員長の谷口泰司さんは「ほとんどの自治体が同じでしょう。どこにでもあるということを忘れないでほしいですが、家族を支援する視点が欠けているんです」と語った。裁判の判決も、父親の行為を「到底許されない」とする一方で、行政に「支援体制が十分でなかったことも要因だ」と指摘していた。

家族任せの障害者支援

   愛知県豊田市の将裕さん(32)は自動車関連会社に勤め、知的障害と自閉症で会話がほとんどできない弟(27)と2人暮らしだ。弟は部屋の隅でうずくまったまま動かない。将裕さんは「施設に預けて、自分の人生を取り戻したい。幸せとか、考えたこともない」とつぶやく。

   母が家を出て、父は6年前に病死し、兄弟2人だけが残された。弟はその頃から暴れたり、外で問題を起こして警察に保護されたりの繰り返しとなった。2年前、豊田市に相談したが、「調査に行く」といったまま連絡はなかった。ところが、NHKが取材をした途端、担当者から電話が入った。

   市に出向くと、担当者は将裕さんに謝罪したが、弟に関しては「地域で問題なく暮らしている」「施設入所も望んでいない」と、とくに何をしてくれるでもなかった。

   その後、将裕さんは睡眠不足などからうつ病と診断され入院した。すると、市は弟を施設に入所させた。共倒れの事態となって初めて動いたのだった。国は2012年に成立した障害者総合支援法で、障害者支援を、従来の施設への収容から地域社会で支える方向へ舵を切った。3本柱は「ショートステイ」「デイサービス」「訪問介護」だ。しかし、専門的人材不足でサービスが行き届いているとはいい難い。

   精神科医で立教大教授の香山リカさんは「福祉、教育、医療、警察という縦割りをなくして、総合的に考えないといけない。人材の育成、NPOとの連携なども含む、包括的な仕組みが必要です」という。「本人と、支える人たちを支えるケア。みんなの問題で、他人事ではないという視点が何より大事になります」

   三田市の監禁されていた長男は、施設で24時間ケアを受けるようになった。父親が逮捕、有罪判決を受けたからだ。豊田市の兄弟も、兄が倒れて初めて行政が動いた。障害者を抱える7000家族への調査(昨年)では、「警察、病院、行政をたらい回し」というのがあった。どれも、あるべき姿とは程遠い。

   *NHKクローズアップ現代+(2018年9月20日放送「"息子を檻(おり)に監禁" 父の独白」)

文   モンブラン
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