男性社員の頭をバリカンで丸刈り、さらには車の高圧洗浄機でシャワー......。福岡地裁が14日(2018年9月)、これらをパワハラと認定し、福岡県の運送会社に対して、被害を受けた男性に、未払い残業代も含めて1500万円の損害賠償を命じた。会社は「事実誤認だ」と控訴するというが、何考えているんだ、この会社?
バリカンで丸刈り、ロケット花火で連射攻撃...
一連のパワハラ行為の写真は、会社のブログに載せられていた。これが動かぬ証拠になった。訴えていたのは、40歳の元社員の男性。とにかくひどい。
ブログでは、男性を「愚か者」「ホラ吉君」などと呼んでいた。バリカンで額から頭頂部を丸刈り。まるで月代(さかやき)だ。書き込みがあり、説明には、「帰社するまでが仕事だと言ってるのに、大分の帰りに温泉に入ってました」
月代を洗車ブラシでこする。「オーナーに、水垢をとっていただき綺麗になりました」。さらに頭を完全坊主に。「ホラ吉は駆け足でシャワールームへ」。シャワールームとは、トラックの洗車場のことだった。パンツ一枚になった男性に、水を浴びせ、「ゼット噴射で綺麗になっていくホラ吉君」(2013年6月30日)
次が「ロケット花火」だ。パンツ姿の男性が川の淵に立っている。「本社裏の川に逃げたので、ロケット花火で狙い撃ち」「川の中へダイビング」「動きが鈍くなったところへロケット花火で連射攻撃」「この後はみんなで小石攻撃で終わりにしてあげました」「めでたし、めでたし」。男性は川の中からカメラを見つめる。男性には髪が戻っていた。(2013年9月17日)
男性が会社の玄関前で土下座している。「大変ご迷惑をおかけしました。二度と人にだまされることなく、真面目に働きます」とある。(2013年10月14日)
訴えていた男性は、「悔しかった。自殺も考えた」という。2012年から約2年間、トライバーとして勤めていた間に、オーナーや同僚からパワハラを受けた。
男性は、「何か悪いことをすると、坊主というのは決まりだったが、楽しんでいるので、ブログに載せたと思う」「部活の体育会系みたいな、やっている方は楽しんでいると思うが、やられた側は悔しい」「今働いている従業員に同じことをしないようにしてほしい」という。
一方、会社側は裁判で、「パワハラはなかった」と真っ向から反論。丸刈りについては、「頭皮の病気に罹患し、対象の従業員は全員丸刈りにしました。高圧洗浄機は「原告自らがふざけて水を浴びせてもらっている状況」。ロケット花火は、「原告自身が、花火で戦争ごっこをしましょうと」「川には自ら飛び込みました」などと主張したが、裁判所は「信用できない」とした。判決はさらに、写真をブログに掲載した点も、「名誉毀損に当たる」とした。
会社は判決後の取材に対しても、「事実誤認だ」と控訴して争う意向だ。会社は、「稼ぐ社員としての自覚があるか」として、様々な注意書きを並べているが、「会社は仲良しクラブではない」「公私混同しない」「会社を甘く見るな」とある。
羽鳥慎一「ひどい話ですが、会社はまだ控訴するという」
菅野朋子(弁護士)は、「パワハラはなかなか証拠がつかみにくいが、これはブログに載っていた写真が証拠になる。また、一連の行為が偶発的なものではない、会社側も認識していたということ。悪いことしたとも思っていない」
羽鳥「ブログは、社内の親睦を図るためと言っているのが、よく分からない」
青木理(ジャーナリスト)「神経を疑う。こんなブログを作る会社は、まともじゃない。これいじめですよ。会社の名前を出したらいい」