スマホやパソコンのデジタルデータを復元する技術「デジタルフォレンジック(DF)」が社会を大きく変える力となり始めている。東京地方検察庁は昨年(2017年)、デジタルフォレンジックを専門に行うDFセンターを発足させ、さまざまな事件の捜査で活用されている。
東京地検DFセンター情報解析監理官は「いろんな犯罪でスマホやパソコンが使われており、デジタルフォレンジックは今後さらに重要になってくると思います」と話す。
NPO法人デジタル・フォレンジック研究会副会長の上原哲太郎・立命館大学教授は「ある統計によると、警察庁が扱うデジタルデータの量がこの10年で9倍になりました。警察庁だけではなく、各都道府県警や国税庁、検察庁もこの種のデジタルフォレンジックを活用しています」
労災認定や未払いの残業代の請求にも、デジタルフォレンジックが活躍している。スマホの位置情報データを復元して、外回りの営業マンが長時間労働を証明し、多額の残業代を取り戻した例がある。より身近なところでは、浸水してしまったデジカメから、思い出の画像データを復元することもできる。
フェイクニュースの改ざん映像見破り
田中泉キャスター「データ復元だけではなく、パスワードの解除や画像の解析なども、デジタルフォレンジックの大きな柱です。たとえば、家出や行方不明の人を探す際には、残されたスマホやパソコンのロックを外して手がかりを探します。
また、画像の解析技術によって、フェイクニュースなどに使われる改ざん画像を見破ることも可能です」
武田真一キャスターは「私たちの生活がデジタルデータと不可分になっている状況で、一挙手一投足がすべて記録され、復元されると、悪用されるという危惧も抱くんですが、どうでしょうか」と心配する。
上原教授はこう解説した。「実際に、パソコンのなかにはたくさんの操作ログみたいなものがありますが、それをかき集めて解析しなければ明らかにならないという意味で、それほど急に恐れることはないと思います。
ただ、パソコンのなかのデータがちゃんと管理されてないと、誰かに読まれる、人の手に渡ることがあるということを、意識しておく必要があります」
*NHKクローズアップ現代+(2018年8月28日放送「消えたデータがよみがえる!?"デジタルフォレンジック"の光と影」)