新元号発表できない安倍首相―総裁三選ネックは身内のはずの右派・タカ派?
週刊ポストは安倍首相と神社本庁との間で「元号」を巡る暗闘があると報じている。神社本庁とは、伊勢神宮を本宗として全国にある約8万社の神社のほとんどを傘下に収める包括宗教法人で、現総長の田中恆清氏は安倍政権を支援する保守系団体・日本会議の副会長でもある。
これまでも神社本庁は、建国記念日復活運動、元号法制定、国歌国旗法、昭和の日制定などの成果を上げてきた。政治運動の中核をなすのが、神道政治連盟と神道政治連盟国会議員懇談会だ。ここには自民党を中心に、衆院議員約300人が加盟しているそうだ。大きな力を持っている団体だが、このところの安倍首相の元号を巡る発言には反対論が多いという。
元号が決まらず、それも、国民生活への影響を考慮して、新元号を事前に公表するという政府の方針が気に入らないようである。神道政治連盟国会議員懇談会のメンバーで、安倍の総理補佐官を務めた柴山昌彦代議士がこう解説する。
「新元号は正式決定の前に、新しく即位した天皇陛下の聴許(お聞き届けいただくこと)を経た上で閣議決定し、それを新天皇が公布する手続きになる」
これは神社本庁が全国的な運動を展開し、10年かけて1979年に法制化された。それだけに、元号を事前に公表するという、改元手続きを軽視するやり方には黙っていられないようだ。安倍の取り巻き議員たちも、菅官房長官に「新元号は来年5月1日の新天皇即位の後にするべきだ」とねじ込んだという。
こうした抗議行動について神社本庁は、「元号は新天皇の即位後に発表するという考え方は戦後一貫している。いま改めて表明したわけではない」という。
このところ、リベラルな政策を打ち出し、国際社会の中で存在感をやや増している安倍首相だが、そのために、靖国参拝も1回しかしていない。政権奪還時の公約だった政権主催の建国記念日記念行事も行われていないし、自主憲法制定もいまだである。
「神社本庁上層部は"今は我慢しろ"と抑えているのが実情です。そこに元号の事前公表問題が出てきた。神社本庁にとって譲れない一線であり、状況次第では安倍批判を抑えられなくなる可能性もある」(雑誌『宗教問題』の小川寛大編集長)
そこで慌てて、安倍は秋の国会で「憲法改正」をといい出したと見る向きがある。安倍首相の真のアキレス腱は、ここであることは間違いないようである。