前代未聞、関東から西へ向かった台風21号は、三重県から瀬戸内海を通ってきょう30日(2018年7月)朝、鹿児島の西にあった。さらにゆっくりと南下して、今度は東へ向かい、その後また西へと迷走するという。この「逆走」、各地に思わぬ被害をもたらした。
行楽地、静岡県熱海市の海沿いにあるホテルニューアカオでは、台風通過のおととい(28日)午後7時過ぎ、ガラス張りの眺望レストランで夕食の最中だった。そのガラス窓が、高波で割れた。海水と一緒にガラス片が飛び散り、大勢の客がパニックになった。
眺望レストランの窓ガラスが高波で粉々
宿泊客が撮った映像があった。「ガラスに気をつけて」と叫ぶ声。ビュッフェスタイルの料理が並ぶ中、床を海水が洗っていた。ワゴンはひっくり返り、食器が散乱していた。逃げ惑う客。家族の名前を呼ぶ声。「階段はこちらです」と誘導する従業員。当時150人の客がいたが、ホテルは危険を感じて、窓際の客を移動させていた。おかげで5人が軽傷で済んだのは幸いだった。
気象庁は台風の逆走に、「風の吹き方、波の立ち方など、これまでの経験が通用しない」と警戒を呼びかけてはいたが、実際何が起こるかは予測不能。台風が西へ向かったのは、1951年の統計開始以来初めてだ。
神奈川県小田原市では海沿いの道路で、高波のために車15台が立ち往生。車の30人は命からがら高台に逃げて無事だったが、その1人は「車が浮き上がるほどの波だった。車を出てからも、しばらく崖のフェンスにしがみついていた。死ぬと思った」といっていた。
小田原では、建設中の観光施設もめちゃめちゃになった。床にまで巨大な石が入り込んで、さながら土石流だ。堤防は7メートルあったが、波は軽々と超えた。
台風は、近畿地方を横断して昨日午前9時には、西日本豪雨の被災地を直撃した。広島県坂町では、まだ片付かない瓦礫の山に無情の雨が降ったが、住民は全員避難所に逃げ、街は無人状態だった。
西へ向かった台風は、従来と違って南の暖かい空気を呼び込んだ。そのフェーン現象で、新潟の上越市と三条市で昨日、39.5度を記録した。
気象予報士の増田雅昭は、「台風の勢力は落ちたが、雨を降らせる力はあり、停滞するので、九州地方は明日(31日)、明後日(8月1日)まで、注意が必要」という。その一方で、台風が通り過ぎた後は熱波がくる。名古屋、大阪は今週ずっと35度超が続く。
MCの国分太一「観測史上初、というのが次々。今後も続くのだろうか」
増田「極端な天候が続くことがあると考えた方がいい」