インタ―ネットを通じて、誰かと、いつでも、どこででもつながることができるSNSの社会の裏で、孤独を感じる若者が増えているという。「つながりはあっても、自分は誰からも理解してもらえない」「SNSで友達の暮らしを見て劣等感を抱いた」と感じているのだ。友達もいるし、一人ぼっちのわけでもないのに「つながり孤独」を感じるのはなぜなのか。
インスタのめり込むほど感じる疎外感
高等専門学校を卒業して地元の会計事務所で働く20代女性は、インスタグラムで大学進学や就職で東京へ引っ越して行った友人の動向をチェックするのが日常だ。しかし、都会での暮らしを生き生きと伝える写真や動画を見るたびに、つい自分と比較してしまう。
「あんなに近くいた人が、やっぱり違う世界にいるんだって、寂しさや羨ましさの気持ちになりますね。自分と同じ人たちだったのに、こんなにも差があるのかって。もう見るのを止めようと、スマホを叩きつけたこともありました」
それでもSNSから離れることはできなかった。「孤独を感じ、しんどかったときは、ああ死にたいと。でも、インスタグラムを止めたらつながりはなくなるし、いつ会えるかわからない。SNSがあって当たり前の生活になってしまっているので、孤独感はずっと付きまとうなと思っていいます」と話す。
消極性感情障害と診断され、心療内科に通う20代の大学3年生は、16歳から始めたツイッターにのめり込み、自分のつぶやきを読んでくれるフォロワーを増やすことに熱中した。「たくさんフォローされていることで、なんとなく認められているみたいな、少なくとも一人ぼっちでない、そういうのが欲しかったんだと思います」という。フォロワー拡大に励み、つながった相手は8000人を超えた。
しかし、つながっていても、「自分に関心を持ってくれる人は4、5人しかいない。携帯を持つことで孤独から救われるみたいな気持ちもあった一方で、SNSを使いこなすほど限界が見えました。つながりの限界が・・・」
8000人のアカウントを削除したが、「SNSで誰か気にかけてほしいという思いはなくならない」という。
一度断ち切れ!「接続過剰な日常」
孤独や生き辛さを抱える人たちのケアに取り組んできた精神対話士の本郷由美子さんはどう見ているのか。「十何年前は、集団の中ではみ出してしまうような孤独を感じるという悩みを聞くことが多かったのですが、今はたくさんにつながっているけれども、本当に心を許せる人がいないというのです。SNSよりも生身の人間に関わりたいとおっしゃっていて、でも、その関わり方が分からないで苦しまれています」
モテクリエーターを名乗り、ファッションやメークの情報を発信して総フォロワーは100万人を超える菅本裕子・SNSアドバイザーはどう捉えているのか。菅本さんはネットの中に自分の居場所を見つけることを勧めながら、「孤独を感じるのはSNSだけど、孤独を癒すのもSNSなのかな。ちょっと自己中心的になる必要はあると思っている。SNSの中では、人に合わせるだけだったら、消費されていってどんどん孤独になっちゃう」
SNS世代とは多少離れた世代で、「平成幸福論ノート 変容する社会と安定志向の罠」などの著書がある詩人の水無田気流(本名・田中理恵子)は、つながっていないとやり切れないという若者たちを「接続過剰な日常」という。孤独について、「悪い所だけではない。孤独をポジティブな面から自分と対話する時間だと思って、少し自分を直視するということもトレーニングしてみたらいいのではないでしょうか」と指摘している。
*NHKクローズアップ現代+(2018年7月25日放送「"つながり孤独"若者の心を探って・・・」)