留学名目で来日、入学翌日に入院する外国人患者たち
年間2万人の外国人を治療する国立国際医療研究センターが今年初めて、保険で治療した患者の調査を行ったところ、少なくとも140人は保険証取得に疑問があった。
日本語学校への留学名目で来日し中国人男性は、日本の保険証を取得して、入学から半年たたないうちに重度の腎臓病で手術を受けた。病院スタッフは「不自然で、初めから治療目的だったのではないかと思っても、目の前に患者がいれば治療します」と医療人として対応するほかないという。スタッフの1人は「日本人でも負担が大変で、治療をあきらめる人がいるのに」とやるせない気持ちを語った。
留学名目で来日したが、入学翌日に入院した外国人が12人もおり、調べると住所が同じ2DKのアパートだった例もある。「こういう状態に疑問を感じる」と話すスタッフもいた。
堀真奈美・東海大教授(公衆衛生学)は「全額自己負担なら問題ないが、不適切なケースが出た」と指摘する。国民健康保険の加入には滞日1年が必要とされていたのが、2012年から3か月に改められたことも引き金になったらしい。
日本の医療費はずっと増え続けて年約42兆円。その40%が税金でまかなわれる。一方、来日外国人も増え続けており、その9.5%が日本の保険証を持つ。外国人治療が財政圧迫につながりかねない。そのうえで不正な抜け穴治療が横行すれば、まじめに保険料や税金を払い続ける日本人がバカを見続けることになる。
厚生労働省が聴取しても、本人が「医療目的ではない」と主張し、留学などの形式を整えれば、それ以上は追究できない。そこにまた悪質業者が介在し、安さを求めて制度を悪用する外国人が後を絶たない。
厚労省の担当者は「どうするべきか。将来的には議論があっておかしくない」と、やる気も現実感もない反応だ。
韓国で2年前に結核の治療を無料化したところ、海外からどっと患者が入り込んで問題になった。イギリスでは3年前から「ヘルスチャージ」として外国人に一律3万円の支払いを義務付けた。堀教授は「客観的事実に基づいた議論が必要で、まずは実態把握をするべきです」という。
しかし、制度の不備や欠陥がすでにわかっているのだから、実態把握より前にまずは食い物にされている制度そのものを改善すべきだ。議論はそのあとだ。そうでなければ納税者・保険料負担者がとうてい納得できないほど、ひどい悪用状態が続く。入国管理局、自治体、医療機関、もちろん厚労省が前面に出て、適切な対応をすぐにとってもらいたい。
※NHKクローズアップ現代+(2018年7月23日放送「日本の保険証が狙われる~外国人急増の陰で~」)
あっちゃん