認知症の母と、母を介護する兄の支援で疲れ果てる弟
もう一つのアラフォークライシスも進行している。
親と同居しているアラフォー世代は300万人。ここ10年で40%増だ。親子ともに年をとる親70代・子40代の「7040問題」だけではない。「きょうだいリスク」がさらなる危機だと、今いわれる。
アルバイト4つをかけ持ちする男性(46)は、広島に50歳の兄がいる。この兄と暮らす70代の母親が2年前に認知症にかかり、兄は仕事を辞めて介護にかかりきりに。男性は兄と母支援のために働きづめで「最後の砦は僕だろう。兄の今後も支える必要があり、現状は人生の理想とかけ離れている。リスクしかない」という。こうなると結婚どころではない。
きょうだい間の扶養料負担が「ほぼ同世代間の新たな格差問題だ」とノンフィクションライターの古川雅子さんは見る。親子の次はきょうだい共倒れのドミノ倒し的な事態も考えられる。親に対するような扶養義務はなくても、他人並みにふるまうのは難しい。
社会福祉士の藤田孝典さんは「アラフォー世代の賃金は低いうえにブラック型の企業が多く、離職、転職を繰り返す。安定している人は少なくなる」と余裕のなさを指摘する。そこが新旧アラフォークライシスの根本的な問題だ。
結婚やきょうだいリスクといったアラフォー危機を放置すれば、未婚者が増え少子化に拍車がかかる。やがて社会保障が成り立たなくなり、そうでなくてもいびつな社会構造を根底から崩しかねない。アラフォークライシスは社会全体の問題でもある。
古川さんは「これからは、家族はこうだという観念には縛られなくていいと思う。他人同士の疑似家族的なこともふくめて、解決の仕方を変えていく必要がある」と、家族のあり方を改めて考えることを勧める。藤田さんは「早めに助けるための仕組みが必要」と訴える。
現状を見れば、危機の進行に大半の人はうなずくだろうが、ではどうするかとなると、対応は焼け石に水の域を出ない。「アラフォー頑張れ」という掛け声だけで解決するわけがない。この世代の正規雇用を大企業に義務づけるとか、税制上の促進策とか、思い切った対策を具体的にとれないものか。この世代に特化した「暮らし方改革」こそが急務だ。