学生時代は就職氷河期、非正規雇用の低賃金や派遣切り、親の老齢化が近づく「7040問題」...と、難問続きの40歳前後が新たな危機に直面しつつある。他世代よりも困難な結婚相手探し、親子ばかりかきょうだい共倒れのリスクもささやかれ始めた。アラフォー世代が家族づくりをできなければ、社会全体が崩れかねない。
保育士の女性(43)は婚活を3年前から本格的に始めた。結婚相談所3社に登録し、月2回は紹介された男性と会うが、なかなかうまくいかない。「年齢のせいか、見た目のせいか、自分でもわからなくなります」という。もともと39歳までに相手を探すつもりだった。希望は年下の正社員男性で、年収600万円以上。今は500万円以上に引き下げたのだが...。
結婚相手の女性に経済力を求める男性が4割以上
1996年に短大を卒業。就職氷河期で保育士になれず、自治体の非正規臨時職員を1年間務めた後、ようやく正規職員の保育士になった。資格を取るのに時間を使い、残業も断らずに引き受けてきた。しかし、37歳の時に高齢になると卵子が老化し出産できなくなるというニュースに衝撃を受けた。「早くしなければと、婚活に疲れちゃって」と切実だ。
就職時の雇用形態が正社員だった女性は70%以上が結婚しているのに、非正規では30%にとどかないという調査もある。社会学者の山田昌弘さんは「日本は職場結婚が多いが、特に女性は半年や1年で代わるので、この世代は正規雇用の未婚男性と知り合う確率が低い。出会いの格差が生じている」という。
飲食店アルバイトの男性(39)は非正規雇用を転々とし、今は実家で70代の母親と同居している。婚活3年、相手として希望するのは年収500万円以上の女性だ。「看護師とか、特殊な仕事の人のほうがいい。わざわざ不利な人と付き合いたくない」と話す。
自分のことを棚に上げてといいたくなるが、そこにはアラフォー男性が収入に自信を持てない現実がある。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、結婚相手の女性に経済力を求める男性は1992年に26.7%だったが、2015年には41.9%もいた。
男女ともに高い条件を相手に求めるのは不安の裏返しだ。相手の年収にこだわるばかりに対象範囲を狭くしている面もある。
これまで269人の結婚にこぎつけた「えひめ結婚支援センター」は、パートナー選びにAI技術を取り入れた。当事者任せにせず、ビッグテータをAIに分析させる。希望年収にこだわらず、当事者には根拠を示さずにAIが選んだ相手と「とりあえず会ってみる」ことを勧める。対象が広がり、従来は13%だった成功率が29%に高まった。
あまり期待せずにお見合い―意気投合―ゴールインということも実際にある。AIがこだわりの壁を取り払った。