過労死寸前の医師と教師 「患者や子供のために」と際限なく膨れ上がった仕事を使命感だけに任せていいのか

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医師としての自己研さんの時間は労働に入るのか?

   きっかけは消化器外科の女性研修医(37)の自殺だった。この病院では休日や時間外労働を医師が手書きで自己申告するのだが、NHKが入手した病院の内部資料にはかけ離れた実態が浮かんでいた。

   この女性研修医は20時までだったはずの勤務が実際には23時56分に病院を出たという記録がある。2015年4月から7月まで、4か月連続して実際の時間外労働が月80時間を超え、自己申告の3倍に達する月もあった。

   帰宅した2時間後に呼び出されたこともある。さらに取材すると、実際に仕事につぎ込んだ時間は労基署の認定時間も上回り、手術の訓練や症例の学習で「異常な長時間労働になっていた」(齋藤裕弁護士)という。医師としての自己研鑽をどこまでを労働と見るかについては意見が分かれる問題だ。病院側は労働時間に含めていない。

   諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師は「診ている患者のための自己研鑽なら明らかに業務だ。最後のところでラインを引きづらい」と語る。

   現場の医師は匿名を条件に「すべてが自己申告、自己管理で時間の概念がなかった」と話す。女性研修医は朝7時半に出勤し、宿直をやり、翌日に手術を3件こなし、夜11時に帰宅していた。これで手術は大丈夫かと、患者サイドも心配になるぐらいだ。

   鎌田さんは「地方の病院では結構あり得る状況だ」という。医師には求められれば診療を拒めないルールがあるところへ、中核病院に患者が集中しやすい。一方で最新の技術を学ぶ時間も必要だ。

   こうした職業倫理はなにも医師に限らないのだが、医療現場では、これはもうはっきりと構造的な問題だ。精神論だけでは解決しない。一部の診療科で土曜診療を廃止したり、地域の医師に当直勤務を分担してもらったりする病院も登場している。

    80時間残業の過労死ラインは医師だけの問題ではない。教員の世界でも、小学校教師の30%、中学校教師の60%近くがこれを上回る。

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