土俵の上で倒れた市長の救護する女性に、「土俵から下りてください」と場内アナウンスが何度も迫る騒動が、4日(2018年4月)に京都・舞鶴市で行なわれた大相撲春巡業であった。土俵の真ん中で挨拶をしていた多々見良三市長(67)は突然仰向けに倒れ、小刻みに痙攣を起こした。約3000人の観客が騒然となるなか、観客席から2人の女性が土俵にかけ上がり、心臓マッサージを施すなどの救命措置を始めた。
ところが、場内アナウンスから「女性の方は土俵から下りてください」という注意が流れた。担当したのは若手行司で、スポーツ紙の報道によると、観客席から「女性が土俵に上がっていいのか」という声があがったためという。
ネットでは「人の命より大事な伝統ってあるの?」
大相撲では土俵は女人禁制になっていて、かつて大阪府の太田房江知事が優勝力士の表彰をしたいと希望したが断られたことがある。
しかし、一刻を争う人命救助に当たっている女性に土俵から下りるよう求めるのはあまりにも非常識である。インターネット上では「いくら神聖な土俵だといっても、人命救助が最優先だろう」「人の命より大事な伝統ってあるの?」といった批判が書き込まれた。
2人の女性はおそらく医療関係者だったのだろう、場内アナウンスの再度の呼びかけに応じず救命措置を続け、到着した救急隊員に引き継いだ後、土俵を下りた。
この一部始終を動画撮影をしていた女性は、「市長が担架で運ばれた後、場内アナウンスは『(市長の)あいさつは終わりました』といっただけですよ。そして、パンパンと拍子木がなって、力士が出てきて取り組みが始まった。3000人の目の前で市長が倒れたんですから、説明があってもよかったんじゃないでしょうか」と語る。病院に搬送された多々見市長は一命を取り留め、会話ができるまで回復しているという。