「ぼくのだいすきな木をきらないでください。小4男子より」 この手紙が老木となって伐採された神戸市の桜の命をつなぎ、東京・府中市で小さな苗となっている。春らしいいい話だ。
神戸市の六甲駅近くで70年近く愛されてきた桜並木の一部が昨年(2017年)9月、老木となって倒壊のおそれがあるとして伐採されることになった。伐採の目印がつけられと、その翌日、桜の木を切らないでという「小4男子」からの手紙が木の幹にくくりつけられた。これを見た神戸市東部建設事務所の志方功一さんは、「みんなの安全が大事なのでしかたなく伐採することになりました」とイラスト入りの返事を木にくくりつけた。
すると2週間後、再び「小4男子」から「まちがげんきになるようにしてください」という返事が木にくくりつけられ、ひまわりの種が同封してあった。志方さんは再び、ひまわりのイラスト入りのお礼の手紙を木につけた。
来年1月に成長した苗木を植樹
木は今年1月に伐採されたが、報道で手紙のことを知った東京都立農業高校の田口喜朗先生が、「桜を元の場所に返してあげられます」と志方さんに電話をした。土台となる桜の幹に伐採された桜の枝を接ぎ木する方法だ。田口先生と同校造園部の生徒たちは、志方さんから送られてきた桜の枝40本を接ぎ木し、このうち18本が高さ約50センチほどに成長した。
伐採された場所にはすでに新しいソメイヨシノが植樹されているため、田口先生らが育てた苗は来年1月ごろ、近くの公園に植えられる予定だ。公園には、「小4男子」から贈られたひまわりの種も植えられている。
大人がちゃんと対応する誠意
犬山紙子さん(イラストエッセイスト)「子どもからの手紙を読んで済ませるだけでなく、大人がちゃんと返事を書くというアクションを起こしたことがこういう動きにつながったんですよね」
坂口孝則(経営コンサルタント)「報道によると、手紙によって木の字がひらがなの時もあったようなので、もしかしたらたくさんの子どもたちが桜の生き残りを願っていたのかもしれませんね。街の総意としてこの温かい話が生まれたのでしょう」