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伊調馨推しの「週刊文春」、栄和人サイドの「週刊新潮」―理がある言い分どっち?

   国民栄誉賞の女子レスリング・伊調馨が告発した(彼女は告発文書には関わっていないといっている)。元コーチ・栄和人氏のパワハラ問題だが、今週は週刊文春が第2弾をやれば、週刊新潮は栄側の言い分を取り上げ、あの告発の裏には、恐喝や美人局の常習犯である伊調の従兄弟がいて、それに謀られたと、週刊文春と真っ向から対立した誌面作りである。

   どちらのいい分に理があるのだろうか。読み比べるのも週刊誌の楽しみである。まずは週刊文春から。伊調の告発に、栄氏はもちろん、日本レスリング協会、伊調の練習場所になっていた警視庁側も、そんな事実はないと否定している。

   週刊文春では、伊調の姉で銀メダリストの千春、告発状にA氏、B氏とあるコーチの田名部氏、バルセロナ五輪代表の安達巧氏が名前を出して語っている。安達氏の経歴は、鹿児島高校から日体大を経て、協会のナショナルコーチなども務めている。栄氏にとって高校、大学の後輩だ。告発の内容は先週と同じなので、安達氏のコメントを紹介しておく。

   <「今回の告発は、栄さんへの個人的な感情からではありません。以前から田名部コーチからパワハラについて相談を受けていました。かなり悩みましたが、いつかは誰かが告発しなくてはいけないことです。二年後の東京五輪に向けて、伊調が練習を再開するには今がギリギリのタイミング。彼女自身、東京五輪に出場したい気持ちがあるからこそ、文春さんの取材に応じたのではないでしょうか」>

   2人の、協会や警視庁が調査する前からパワハラを否定するのはおかしいといういい分には理があると思う。

   週刊新潮はどうか。栄氏は「不徳の致すところ。パワハラをしたという心当たりはないが、彼女の受け止め方もある」としおらしい。だが、この告発の裏に、伊調の従兄弟と称するI・Tという男と栄氏とのいざこざがあったと、栄氏はいうのだ。

   それは3年程前、看護師支援団体があるトラブルでその男と関わり、そこが行うイベントに栄監督を呼んできてやる、ついては栄氏のギャラも含めて100万円という契約を結んだ。その後、栄氏のギャラとして別途50万円を出せといってきて、用意できなかったため、栄氏に直接頼んだらノーギャラで出演してくれたという。そのことでIが栄氏を逆恨みしたのではないかというのである。Iはそのほかにも反社との付き合いがあり、警視庁に恐喝容疑で逮捕されたとがあったという。

   ここまでは、Iという男が今回のことを仕掛けたというには根拠が薄弱だが、Iはアスリートが使う筋肉サポーターを販売しているという。現在、女子レスリングは至学館一強体制だが、男子レスリングは、断然、日体大が強い。<「知り合った日体大OBに栄さんの追い落としの協力を頼んだはずです。現に、Iさんは以前から、告発文に登場する田名部コーチと一緒にいるところを目撃されていました」(Iの知人)>

   至学館と日体大の勢力争いが背景にあるというのである。先の安達氏も日体大出身ではある。さらに、日本レスリング協会の幹部は、栄氏が伊調や田名部に厳しい言葉をかけなければならなかったのは、<2人は、練習場でいちゃいちゃとまるで恋人同士のように振る舞っていた>ため、神聖なマットを汚すような選手になってしまった伊調のことを思い、それがスキャンダルとして報じられないよう、2人の間にくさびを打ち込もうとしたのだ、親心からだというのである。

   今回の告発をI氏の栄氏への恨み、コーチとの間を割かれた伊調の腹いせだと、低次元なものに落とし込もうという栄、協会側のやり方は、私には見苦しいように思える。だが、至学館と日体大の覇権争いという見方は興味深い。どちらにしても、伊調側にも栄、協会側にも組しない客観的な第三者機関が聞き取り調査をし、それを公表すればいい。私は、いまのところ伊調側に理があるように思うのだが。

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