「子どもができてすみません」
先月28日(2018年2月)、毎日新聞にこんな投書が掲載され、物議を醸している。投稿したのは妊娠中の保育士の妻を持つ名古屋市の男性だ。妻の勤務先の保育園では、園長が結婚の時期や妊娠の順番を決めており、「先輩を追い抜くことはダメ」という暗黙の了解があった。
男性は妻と「子どもができてすみません」と園長に頭を下げに行き、渋々了解してもらったものの、「勝手にルールを破った」と言われて、妻は肩身の狭い思いをしているというのが投書の内容だ。
街の反応は「そんな時代錯誤なことがあるなんて、信じられない」「たしかに、しわ寄せや他に迷惑をかけることもあるかもしれないが、それでもおめでとうって言ってあげるのが人間」と当然ながら批判ばかりだ。
背景に深刻な保育士不足
背景にあるのは保育園の人手不足だった。元保育士の女性は「たぶん、どこの保育園でも、妊娠して快く『おめでとう』と言ってくれるところは少ないのでは。妊娠した人が加害者のようになってしまう」と実態を明かす。現在、育休中という保育士の女性は、園長から「育休を返上して早期復帰してほしい」と再三言われているという。
投書を保育園側はどう受け止めているのか。「とくダネ!」は都内の保育園に緊急アンケートを実施した。妊娠の順番を決めることについて、「マタニティ・ハラスメントだ」「人権侵害」と多くの保育園が批判的だったが、「正直、運営側としては困ります」「そうしなければどうにもならない現場の事情があったのだろうと同情したくなる」という声もあった。
他の仕事より10万円も安い月給
東京都では保育士の有効求人倍率は約6倍。6つの保育園が1人の保育士を奪い合っている現状だ。その一方で、保育士の平均月収は全産業平均の33.3万円に比べて22.9万円の低水準だ。
宋美玄(医学博士)「保育士さんが慢性的に不足しているのは、待遇の悪さが一因です。これを機に保育士さんの待遇が改善されるといいと思います」
梅津弥英子キャスター「この投書をした男性は、自分の妻の保育園に不満を言うだけでなく、世の中に広く当事者意識を持ってほしかったのではないでしょうか」