中国の最高の意思決定機関である全国人民代表大会(=全人代、国会にあたる)がきのう5日(2018年3月)から始まった。最大の焦点は、国家主席の任期(最大2期10年)を撤廃する憲法改正だ。習近平主席は毛沢東時代への復帰を目指すのか。この危険な臭いに、庶民は「奇妙な動画」で応え始めている。人も車も、どんどん後戻りしている動画だ。
男女が踊りながら後ずさり、スーパーのカート、車椅子も後ずさり...
音楽付きで、男女が踊るように後ずさりすると、車も後ずさり、スーパーのカート、病院の運搬カート、車椅子も後ずさり......。つまりは、全人代のテーマ、国家主席の任期撤廃は、独裁色を強め、時代に逆行しているという皮肉だ。庶民の嗅覚は鋭い。
習近平国家主席は今回の全人代で、主席の任期を「2期を超えることはできない」とする憲法の文言を削除しようとしている。開催期間も例年より5日も長くとった。習近平氏は現在64歳。今年2期目に就任する予定だが、任期終了時は69歳になる。それをさらに伸ばそうというわけだ。
そうなるとどうなる? 元産経新聞北京支局員の福島香織さんは、「独裁色が強くなります。2035年が節目とも言われています」という。中国は今世紀半ばまでに、アメリカと並ぶ大国になると党大会で決まっている。2035年はその工程の半ばというのだが、習氏はその時81歳だ。
そもそも主席に任期を定めたのは、かつて生涯主席だった毛沢東時代の教訓からだ。高齢の毛主席は、自らの権力を確立するため、「文化大革命」を発動するなど、「老害」とも言える理不尽な政治闘争を仕掛けた。そのため多くの命が失われて、経済が停滞し、中国社会は深い傷を負った。
プーチン氏、安倍首相も任期のルールを変えた
「神様」であった毛沢東も「老害」を避けられなかったことは、国民の誰もが知っていることだ。「不思議動画」の氾濫は、そうした庶民感覚のストレートな表出だが、政府はただちに動画の一掃と、SNSでの検索の規制に乗り出し、「習近平」「独裁」などの言葉の検索ができなくなった。 小倉智昭「ルールを変えてでも、政権を担っていきたいという気持ちって、プーチンさんもそうだし、安倍さんだってそう。やりたいことがあると言うことですかね」
安田洋祐「気になるのは、習近平さんが個人的にやるのか、党が認めているのか。独裁には理由がある。そのメリットを党が認めたとなると、国自体が変わってくるかもしれない」
習氏への個人崇拝が高まっていて、毛時代を思わせるかと思うと、暗殺未遂と思われる事件が6年間で9回もあったりする。福島さんは、「指導層はさい疑心も強くて、庶民の前にはなかなか出て行かない」という。
小倉「習近平さんはどんな中国にしたいのか?」
福島さん「今世紀半ばには、世界一流の軍備を持つ強国にする、と言っている。拡張主義、覇権主義は推し進める」
小倉「しかし、やり方は汚い。南シナ海の問題なんか......」
福島さん「あの人たちは、もともと自分たちのものを取り返すと言う。強いリーダーで中国が安定するという面だけ見ない方がいい」
危ない大国がさらに危なくなるということか。
ヤンヤン