勝利の瞬間、皆抱き合って涙、涙。本橋麻里(31)、吉田夕梨花(24)、鈴木夕湖(26)、吉田知那美(26)、藤澤五月(26)。チームのトレードマークは笑顔だった。とくに藤澤の明るさは、韓国でも大人気だった。
24日(2018年2月)の最後の3位決定戦は劇的な幕切れだった。相手のイギリスはソチ五輪で銅メダル。世界ランキング4位の格上だ。今回予選で負けていた。
カーリングはまさに「テレビ向き」の競技だ
1点を奪い合う接戦で、第5エンドで2-3とイギリスがリード。山場は第9エンド。藤澤のショットがイギリスのストーンの陰に入った。イギリスは、自分の石で日本の石を弾き出す作戦をとったが外れて、4-3と初めて日本がリードした。最後の第10エンド、藤澤の最後のショットがイマイチだったが、イギリスは一気に弾き出すはずが、日本の石が真ん中に残った。
「ナンバーワンは日本だ。日本、銅メダル」と実況のアナが絶叫した。
ドラマの連続だった。予選リーグでは、緒戦は連勝。その後負けが続いて一旦諦めたのが、アメリカの敗戦で決勝トーナメントに残った。「こんなに負けて?」と選手たちも戸惑っていたほど。準決勝の相手韓国は予選で1敗という好成績だったが、その黒星をつけたのが日本だった。その韓国には、大接戦の末に敗れた。
カーリングはまさに「テレビ向き」の競技だ。室内で、真上からのカメラがストーンの動きを克明に追う。視聴者はある意味、選手たちより正確にストーンの軌跡を見ることができる。予選から、こんなに長い間中継された競技は他にない。人気は徐々に高まっていた。しかし、メダルにまで届くとは......。
勝利の瞬間、本橋キャプテンの目から涙が溢れた。「皆に本当に感謝です。スタッフ、コーチ、選手、応援してくれた応援団全員にありがとうと言いたいです」
「チーム青森」でトリノ、バンクーバーに出場。「マリリン」の愛称で知られたが、メダルには届かなかった。そして8年前、故郷の北見市に戻り、「LS北見」を立ち上げた。ゼロからのスタートだった。スポンサーなし、選手なし。
今回のチームになるまでには時間が必要だった。結婚して出産も。強豪チームにいた藤澤が加わり、スキップになって、本橋は自分が試合に出なくてもいけると踏んだ。