私のオフィスの壁に「アベ政治を許さない」と勢いのある筆で書いた俳人・金子兜太さんの書(コピーだが)が貼ってある。時事通信は金子さんが亡くなったと「誤報」を流して大騒ぎになったが、その翌日の死去であった。享年99。
金子さんは現代俳句を牽引してきたといわれるが、私の好きな句に、「海に青雲(あおぐも)生き死に言わず生きんとのみ」、アメリカの9・11の直後に詠まれたという「危し秋天報復論に自省乏し」、「背高泡立草は自滅する花驕るなよ」というのがある。時代に敏感な人だった。合掌。
安倍首相のゴーマンな政権運営に綻びが出始めた。一つは麻生財務相が派閥を拡大してキングメーカーになろうとしていることだ。週刊新潮によれば、黒田東彦日銀総裁が再任されることをスクープしたのは、麻生財務相と親しい記者のいる共同通信だった。安倍首相が平昌五輪へ出席のため訪韓していたタイミングに出たため、「安倍総理は、越権行為だと激怒した」(大手メディアの経済部記者)そうである。
2019年のG20開催は大阪で内定しているのに、福岡開催案が浮上したのも、福岡が地元の麻生が話題作りをしたとの見方があるようだ。
綻びのもう一つは、森友問題で虚偽答弁を続けた佐川宣寿前理財局長が、安倍首相から「官僚の鑑」だと持ち上げられ国税庁長官へと大出世したが、確定申告のこの時期、佐川の罷免を求める署名が2万人に達し、霞が関の財務省本庁舎前に佐川を辞めさせろというデモ隊が押しかけている。
週刊ポストによれば、国民からの批判の声も「裸の王様」である安倍には少しも届かず、国会でモリカケ問題について答弁する関係省庁の幹部に対して、「もっとはっきり否定せよ」という「PMの指示」と書かれたメモを入れているそうだ。PMとはプライムミニスター安倍のこと。ふざけた話である。
佐川長官の方は、週刊ポストが追いかけたところ、家には帰らず、公用車に乗ってホテル住まいだという。追い打ちをかけるように、週刊文春が佐川が建てた1億円豪邸について追及している。佐川の家は世田谷区の閑静な住宅街にあるという。購入したのは2003年9月だが、この土地は「競売物件」だったため、相場よりはるかに格安で手に入れたと週刊文春は報じている。
当時、佐川は塩川正十郎財務相の大臣秘書官を務めていたが、杉並区の官舎住まいで、世田谷で暮らした形跡はない。財務省OBは、競売物件の購入が内規等で禁止されているわけではないがと前置きして、こう話している。「財務官僚が競売物件や差し押さえの背景について情報を仕入れやすいのは事実。まして佐川氏は時の財務大臣秘書官でした。そうした立場を利用して、相場より安い物件を手に入れたように見えてしまう。だから、普通は競売物件だった土地を買ったりしません。佐川氏の行為は、財務官僚としての倫理観に欠けていると言わざるを得ない」
森友学園への国有地売却問題についての国会答弁で、「資料はすべて破棄した」と厚顔無恥にいい続けた人間に、倫理観などあるわけはないが。しかも、2月9日には、財務省側が森友との契約に関するやり取りが記された文書を公開したのである。そこには、当局が学校法人を訪問して、国の賃付料の概算額を伝えると記されているのだ。
抜擢した安倍首相は逃げ切れるか?来年度予算を人質に取られて立ち往生
安倍や菅が「佐川を証人喚問には絶対呼ばない」といっても、国民は佐川の証人喚問をせよという声が大勢を占めている。佐川長官は就任以来、メディアの前には姿を見せず、就任記者会見もいまだにやっていないのだから、自分のついた「ウソ」の重さを分かっていないわけではない。
安倍はこの問題から逃げ切ろうと画策しているようだが、野党に追い込まれると政治部デスクは見ている。<「野党は佐川氏の招致を、政府が二月末の衆院通過を目指す予算案の"取引材料"にしようと考えています。政局を左右する重大なポイントになってきました」>
国税庁長官の任期は1年だそうだから、あと4か月持ちこたえれば、その後のおいしい天下り生活が待っていると佐川は考えているのかもしれないが、「国税の歴史に泥を塗った」(落合博美・元朝日新聞編集委員)という烙印は一生消えるものではない。
一方の当事者である籠池泰典森友学園前理事長と妻の諄子は、この極寒の中、大阪拘置所に拘留されたまま、家族との接見も認められない「異常事態」が続いている。週刊文春で同房者が、籠池は死刑囚以上の厳戒警備態勢に置かれていると証言している。籠池が入れられている独居房は<「体が動かせないので気が狂いそうな程ストレスがたまりましたね」(同房者)>
司法も安倍に「忖度」しているのかと週刊文春は結ぶが、こんな非人間的なことがまかり通る日本は、北朝鮮のことを非難できはしない。