27歳の若さで急逝したコーチに捧げるメダル
もう1人のメダリストは、原大智。彼は日本選手の中では、W杯などでの成績では3番手だった。つまり期待も3番手。これが良かったのかもしれない。男子モーグルに初のメダルをもたらした。
期待の堀島行真選手(20)らが準決勝で敗退。たった1人で決勝に臨んだのだが、2度目のスタート前でも全く緊張が感じられない。テレビカメラに向かって明るくポーズを取っていた。
そしてスタート。エッジのキレが素晴らしい。スキーが浮かない。舐めるように雪面をいく。最初のエアは「コーク720」、着地しても乱れがない。2度目が「バックフリップ」で全く危なげない。タイムは24秒90だった。ゴールではさすがに祈るように待った。出た得点が82.19、銅メダルが確定。これが日本のメダル第1号だった。
モーグルの採点は、スピード、エア、ターンで出る。原選手の場合、順に3位、5位、2位で、ターンが圧倒的に優れていた。ターンは配点では6割を占める。彼のスキーは雪面を舐める。重心がぶれない。頭が動かない。
会見も明るい。「すごく楽しかったです。滑りたくて、滑りたくて、全くミスる気なかった。嬉しかったです」
メダルは5年前に亡くなった平子剛コーチに捧げたいという。原選手を小学生から指導してきたが、心筋梗塞で27歳の若さで急逝した。棺を前に「先生、絶対にオリンピックに出ます」と誓ったのだという。そして昨日、「やりましたよ。銅メダルですけど」と報告していた。
文
ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト