高木美帆がとうとうやった。スピードスケート1500メートルで女子では最高の銀メダルだ。相手は世界記録保持者の米のH・ベルフスマ。中盤のせめぎ合いから最後は、勢いの落ちた相手をぶっちぎった。さすがに涙が溢れていた。しかし、トップとの差がコンマ2秒とわかると、「悔しい」と一変。これが美帆だ。
8年前のバンクーバー五輪。史上最年少の五輪代表の15歳だった。天才と言われて臨んだ初の五輪だったが、結果は1000メートルでは最下位、1500メートルでは23位と無残だった。そして4年後のソチ。代表に選ばれたのは2つ違いの姉菜那で、美帆は落選した。
「姉菜那はカメのようにコツコツ、妹美帆はウサギ」
コーチは、「姉はカメのようにコツコツ、妹はウサギ」と違いを言う。落選で憮然とする美帆の表情を、テレビは意地悪くつかまえていた。美帆は体の改造から取り組んだ。そして昨年、W杯では1500メートルで4戦全勝。女王、小平奈緒にも勝った。その上で臨んだ平昌(ピョンチャン)だ。それが涙の訳だった。
小倉智昭「ソチの落選から、彼女のスケート人生はガラリと変わりました」
笠井信輔「W杯全勝から、金メダルの期待もあった」
小倉「相手がベルフスマじゃなくて、(金メダルの)イレーン・ビュストだったら、結果は違ったかもしれない」
確かに、ソチ五輪選考会でのタイムと比べると、今回の1分54秒55は、5秒以上も速い。
で、当の高木は、「リングを一周している間に、コンマ3秒早ければ勝っていたのにと、悔しさがこみ上げてきた」と言っていた。本当に小倉の言うとおりだったかもしれない。
今回美帆は、姉の菜那とパシュートにも出る。これは金メダルの可能性が高いといわれている。