平昌(ピョンチャン)五輪で昨日(2018年2月12日)、日本選手が続々とメダルを手にした。スピードスケートの女子1500メートルで高木美帆選手(23)が銀、フリースタイル男子モーグルで原大智選手(20)、ジャンプ女子の高梨沙羅選手(21)が銅だ。まずは苦節4年の高梨選手から。
平昌のジャンプ台の下で、小倉智昭がその瞬間を見ていた。2度目のジャンプで、それまでで1位になれば、メダルが確定する場面。強風で中断、スキーを外し、毛布をかぶって寒さをしのいだ後、ようやく飛んだ。見事な跳躍で103.5メートル。着地した高梨は、両手を上げてガッツポーズ、白い歯がこぼれた。
「寒すぎて感覚がどんどんなくなっていった」
金メダル確実と言われながら4位に沈んだソチ五輪から4年。この日のために悪戦苦闘してきた結果だ。笑顔とともに涙が溢れた。伊藤有希選手(23)が駆け寄って抱き合った。
「金メダルは獲れなかったけれど、競技人生の糧になる貴重な経験をさせていただきました」と、妙に大人びたコメントは、やはり悔しさを物語る。
平昌のスタジオに現れた高梨選手は「いちばんいいジャンプを飛べた」と晴れ晴れとした表情だった。競技が終わったのが13日午前零時に近かった。ドーピング検査が終わって寝たのが午前3時で、午前6時からはテレビに出ていたという。「よく眠れなかった」。
平昌は、W杯で53勝目を上げた会場だ。風が強いこともわかっていたが、寒さは尋常ではなかったという。「(待っているうちに)感覚がどんどんなくなっていくのがわかった」。終わって3位。表彰台の気持ちを、「オリンピックはやっぱり違いますね、景色が」と言った。
話はどうしても、ソチへ行く。「目の前のことしか見えていなかった。平昌では自分の足で立てた」「試合自体を楽しめた。周りからパワーをもらえて、自分を信じて」。
ライバルは20センチも背が高く、スキー板も長い
この4年間で状況は大きく変わった。W杯で記録となる54勝目が出ない。今シーズンは10戦して1度も勝っていない。ライバルの急成長だ。ノルウェーのマーレン・ルンビ、ドイツのカタリーナ・アルトハウスが常に高梨の上をいく。技術もあるだろうが、高梨には大きなハンディがある。身長だ。
ルンビの171センチに対して高梨は152センチ。スキーの長さは身長の145%までと決まっているから、242センチと220センチの違いになる。助走のスピードは、体重の重いほど、スキーが長いほど速い。時速0.2キロ違うと、距離は約1メートル伸びるという。
高梨選手はこのハンディを克服するために、風の抵抗を抑えるため姿勢を低くするなど工夫を重ねてきたのだが、この日の2人のスタートから踏切までの映像を並べると、ルンビの方ははるかに早く飛んでいた。スピードの違いが歴然としていた。「今のままでは、彼女たちに勝てないと思った。改善しないと」。
小倉が「勝たせてあげたかった。2年前なら、沙羅ちゃん圧勝していた。あの2人(ルンビ選手ら)は体も大きいし、ジャンプ力もあり、ミスをしない」と悔しそうにいった。
高梨選手は14日には帰国する。札幌の大会、W杯と新たな戦いが始まるのだという。