東海テレビ開局60周年記念作品の第1話。脚本は昼ドラ時代の中でも名作とされる「幸せの時間」「聖母・聖美物語」を手がけたいずみ玲。制作会社は同じく昼ドラの名作「牡丹と薔薇」「冬の輪舞」などを手がけたビデオフォーカスが担当し、それだけでも否応なく期待できる作品だ。
物語はいきなり、普通の夫婦とその父親が惨殺される衝撃的なシーンからはじまる。残されたのは、返り血を浴びた男(遠藤憲一)と赤ん坊のわめき声...。主人公の若手弁護士・浅利祐介(滝沢秀明)の見た夢だったが、実際にこのような事件が1987年1月に起こったという設定だ。主人公は、この事件で生き残った赤ん坊だ。主人公にあろうことか、家族3人を殺害した罪で死刑執行を待つ男・柳瀬光三の弁護および再審請求を、柳瀬の元妻の実娘・河村礼菜(谷村美月)から依頼されることで物語が動き出す。
担当刑事も弁護士も最初は冤罪を疑わなかったが...
その柳瀬光三だが、何故事件を起こしたのか。柳瀬にも、当時主人公と同じくらいの年齢の赤ん坊の息子がいたが、妻のあかね(横山めぐみ)が男と駆け落ちして出て行ってしまう。最初は一人で育てるつもりだったが、健康診断で自身に胃がんが見つかり、妻の実家・花木家に子供を預けることに。しかし、花木家は引っ越していて、その家には主人公の家族・大富家が住んでいた。大富家は花木家の新居の住所を聞いて回ったり、柳瀬本人を一晩泊めてくれたりしてくれた。が、翌日花木家の新居を訪れても、妻の父・重彦(目黒祐樹)には、もう関係ないと追い返され、更に財布をなくし途方に暮れる柳瀬。結局帰りの交通費だけでも大富家に借りようと戻ったが...。
柳瀬は逮捕直後の警察署でこう自供する。「大富さん、裕福すぎたんですよ。光男と同じ頃に生まれた祐介君はふかふかのベッドに寝かされてころころ笑っている。幸せってのはこういうもんだって、わざと見せつけられる気がして。そしたら無性に怒りがこみ上げて...」。なんとも人間のリアルな負の感情を、まざまざと表現したような台詞だが、殺害の動機としては釈然とするような、しないような...。実際、当時の担当刑事(石丸謙二郎)も柳瀬の冤罪を疑い、元担当弁護士も無罪を信じて疑わなかった。さらに、預け先に困っていたはずの息子の光男は、当時柳瀬がどうしたかも供述しないままで、今も居所が不明だ。怪しい。