大手食品メーカーの企画開発担当の川原由加利(長澤まさみ)は、ウーマン・オブ・ザ・イヤーにも輝いたキャリアウーマンである。研究医で優しい恋人、小出桔平(高橋一生)と同棲5年目を迎え、順風満帆な日々を送っていた。
そんなある日、田舎から上京した母親を紹介しようと桔平とカフェで待ち合わせるが、桔平は現れない。その夜、訪ねてきた警察官から、桔平がくも膜下出血で倒れ昏睡状態であることを知らされる。そして、彼は名前も職業も戸籍もすべて偽造されたものだった。 由加利は桔平の正体を突き止めるため、同僚の叔父・海原(吉田鋼太郎)が営む探偵事務所を訪ねる。夫の遺留遺品の中に、妻に内緒で書いた原稿用紙700枚に及ぶ小説が残っていたという実際の事件から着想を得ている。
TSUTAYAグランプリ作品の映画化
TSUTAYAが新たな才能を発掘し、販促・制作を全面的にバックアップする「TSUTAYA CREATORS'PROGRAM」で、応募474本の中から2015年のグランプリを受賞した作品の映画化である。
題材も面白そうだし、キャスティングも良いはずなのに、何か物足りない。高橋ファンからは「それは一生の出番が少ないからよ」という声が聞こえてきそうだが、桔平のもう一つの顔を知る女子大生役の川栄李奈、酔いつぶれた由加利を一晩泊める場末の酒場の店主役の黒木瞳など、のちに何か重要な秘密でも明かすキーパーソンかと期待していた脇役が、最後までとくに何もないという肩すかしが多かったのも原因の一つといえよう。